技術・文化・教育

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久米 豊 経団連副会長


私は日本の将来は技術と文化と教育で決まると信じている。これからの日本にとって大切なことは、第1に産業における革新、特に技術革新、第2に新しい日本文化の創造と主体性の確立、そして第3に教育の変革と充実とによる必要な人材の育成である。

第1の課題については、新しい技術の創造が立国の柱であるという認識のもとに、研究開発の活性化を図って、進んだ技術を水準の高い労働力と革新的な経営に結合させなければならない。産業の空洞化を防ぐ方策は、基本的には国内産業間の生産性格差を構造的に縮小させて、コストの国際競争力を回復することであるが、産業進化の結果として不可避的に生ずる国際分業に対応して国内産業の活力を維持するためには、新技術・新産業の創出と労働力の再配置が必要である。

第2の新しい日本文化の創造とは、いわば真の「日本らしさ」の確立である。規制緩和をはじめとする構造改革とは、政治・行政・経済・社会の基本的な枠組みを変えてゆくことであって、それはこれまで馴染んできた風土を変革し、その上に新しい文化を創造することである。政治や経済の中に示される国家としての理念や行動が国際的に通用し、かつ第1級のレベルにあること、そしてそれが国民すべてに共有され、支持されていて、独特の「日本らしさ」として態度や行動にあらわれていることが大切である。それが国としての風格というものであろう。

以上のことを具現するのは人であるから、第3の教育の変革と充実の重要性は明らかである。日本にとって真に望ましい人材を育成するために、知識修得に偏した今の学校教育を見直すとともに、家庭での教育や企業の人事行政なども反省すべきである。

日本はもっと高い志と深い哲学とを抱き、主体性をもって行動すべきであると考える。それは政治や外交においても、経済界についても、そして教育の場にあっても言えることである。(くめ ゆたか)


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