豊田 章一郎 経団連会長
こうした復旧活動には引き続き力を入れねばなりません。それと同時に、長期的な観点に立った「安全・安心な国土づくり」に、本格的に取り組んでゆく必要があります。ここ数年、日本では、地震や火山の噴火など大きな災害が相次ぎ、最近では地下鉄サリン事件など、日本社会の安全が内外から問われるようになっています。日本は今、規制緩和の推進などさまざまな面から「活力ある経済社会」を目指していますが、これは社会が安全で安心できることの上に立ってこそ実現できるものであります。
私たちは今、災害に強いまちづくり・国づくりのビジョンを構築するとともに、大災害が起こった時などに備えて、国や自治体、あるいは企業レベルでの危機管理体制を確立してゆかねばなりません。その一環として、首都圏機能の分散・移転についても、具体化を推進していく必要があります。
すでに政府では、非常時の一元的対応に向けた内閣の情報収集体制の強化や、「防災基本計画」「災害対策基本法」の見直しに着手していると聞いています。経団連としても、こうした活動にできる限り協力するとともに、安全・安心な国土づくりについて、関係する委員会での討議を深め、積極的に提言する必要があります。また、個々の企業としても、専用回線の整備や非常時の指揮系統の明確化などの緊急事態への対応体制を、今一度しっかりと見直すべきことはいうまでもありません。
今後とも、地元経済との連携をとりながら阪神・淡路地域の復興に協力するとともに、安全・安心な国土づくりという中長期的な課題にも積極的に取り組んでゆきたいと思います。(とよだ しょういちろう)