日米関係の重要性

豊田 章一郎 経団連会長


今年は終戦50周年にあたります。私は、産業人として戦後の経済発展を振り返る時、とりわけ日米関係の重要性ということに思いをいたします。

戦後の経済復興と発展において、日本は米国に感謝しなければならないことがたくさんあります。米国は、民主的な経済制度を日本に導入し、復興の為の資金や豊かな輸出市場を提供してくれました。近代的な経営システムや先進技術など、日本は米国から多くを学びました。私は、米国の寛容でオープンな精神に感謝していますし、われわれは、こうした気持ちを忘れてはならないと思います。

日本が米国から今後も学ぶべきことは、まだまだあります。たとえば「ベンチャー・ビジネス」です。日本は現在の閉塞した経済状況を打ち破らねばなりませんが、そのためには新しい分野に挑戦するベンチャー・ビジネスの役割が重要です。米国ではこのベンチャー・ビジネスが活発で、次々に新しい分野や市場を切り拓いて、経済を活性化させています。その背景には旺盛な起業家精神や、個人の能力、多様性を尊重する風土があります。また「規制緩和」においても然りです。米国では1970年代の後半以降、運輸、通信分野などの規制緩和を進め、それが今日の米国経済のダイナミズムにつながっています。指導者のリーダーシップとともに、規制緩和に伴う‘痛み’を受け入れた産業界や国民の対応も素晴らしいと思います。日本としては、今日まで深く織りなされてきた日米関係をさらに緊密にし、それを軸としてアジア・太平洋地域をはじめ、世界経済の発展に一層貢献できるようにしていきたいと思います。

先般、自動車をめぐる日米協議が合意に達しました。日米両国の経済・産業への影響や世界の経済・貿易体制への影響を考えると、合意は大変喜ばしいことでした。しかしながら、こうした両国間の経済問題は、日米の相互依存が深まるにつれ、これからも引き続きさまざまな形で起きてくるものと思います。その際、官民共に冷静に意を尽くして話し合い、深刻な政治問題にまで発展させないようにしたいと思いますが、そのためにも、日米の産業界・経済界は face to face で対話するチャネル、パイプをこれまで以上に充実させ、日米間のいろいろな問題について普段からの意思疎通を一層深めていくことがますます大切であると思います。(とよだ しょういちろう)


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