経済活性化のために税制改革を

樋口 廣太郎 経団連副会長


「政府は帆であり、国民は風であり、国家は船であり、時代は海である」1800年代の前半のドイツの評論家ベルネの言葉である。政府が政策の大きな帆を張り、国民がこれに支持という風を送り込むならば、国家という船は海原を危なげなく航海でき、目的に向かって進むことができるとの意味である。

これを今日の日本の状態と考え合わせると、残念ながらほど遠い状況であるといわざるを得ない。いうまでもなく政治と経済は政策の両輪であり、密接不可分のものである。「経済は一流、政治は三流」と諸外国から揶揄されるような状況では、先行き心もとないばかりである。経済を政治の決断で活性化させていくことが今まさに必要ではないかと思う。

今日の日本経済の閉塞状況を脱却するためには、金融システムの信用秩序を守りながら、財政で土地・株式などを動かし、金融がそれらをフォローする健全な経済の姿を早くつくりだすことが必要である。

それには、まず土地の流動性の向上を進めることである。そのためには、政府税調でも検討が進んでいるが、土地譲渡益課税・不動産取得税の見直しに加えて公共用地先行取得の促進、民都機構の事業拡大などを急ぐ必要がある。このことは、金融機関の不良債権問題を確定させ償却の目途をつけることにもつながるのである。

次に、企業活動を活発化させるために、法人税率の引下げ、地価税の凍結なども早急に実施されるべき問題である。

わが国の法人税は、法人税率およびこれに地方税などを加えた実効税率において世界で最も高い税率となっている。これが、産業空洞化の1つの大きな要因ともなっている。

株式市場の活性化については、みなし課税の凍結が決定されるほか上場基準の緩和、ミニ市場などが具体化されているが、さらに有価証券取引税の廃止やCPの発行条件の緩和などにより取引の活性化を図る必要がある。

いずれにせよ、来るべき21世紀において、わが国の経済社会が活力を維持・拡大するために、税制改革を考えるべきであると思う。(ひぐち ひろたろう)


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