月刊keidanren 1996年12月号 巻頭言

ODAにも民活導入を

熊谷 直彦
経団連副会長


欧米諸国が軍事貢献に力を入れているのに対し、日本にとっては経済援助が、国際協力・国際貢献の重要な柱であり、5年連続ODA(政府開発援助)実績世界1位を維持している。しかし、財政再建が待った無しの状況である以上、ODA予算(シーリング・ベース)も今までのような7〜10%という高い伸び率を維持していくことは難しい。来年度のODA予算は、シーリングが2.6%と、史上最低の伸び率に抑えられている。

こうした中で、10月に外務省が発表した1996年版「わが国の政府開発援助」(ODA白書)では、BOT、BOO等民活インフラ事業支援のためにODAを活用していく方針が打ち出されている。そもそもインフラ整備はODAが最も力を入れてきた分野であり、近年急増している民活インフラ事業との連携は当然の流れと言える。限られたODA予算のもとで、より多くのインフラ事業を、より効率的に展開することが可能となるので、是非とも積極的に推進してもらいたい。

民活インフラ分野以外でも、民間の経験、ノウハウ等を活用することで、ODAの効率性を高めることが重要である。すでに経団連では、ODAにより民間の人材を民間主導で途上国の民間セクターにも派遣し、技術、ノウハウの移転を図ることを提言している。今後は、この提言の着実な実行を図るとともに、少数の民間専門家を分散して派遣するだけではなく、ODAで研修センターを設立し、広く第三国からも研修生を受け入れる等、より大きな効果が期待できるスキームを検討することも必要であろう。

一方で、ODA白書では、円借のアンタイド化を維持する方針が再確認されている。しかし、日本企業の受注率が20%台まで低下した結果、日本企業の円借案件発掘に対する関心も低下してきているのが実情である。ODAの分野でさらに民活を導入していくなど、民間企業のODA離れを食い止める施策が必要と感じている。

(くまがい なおひこ)


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