月刊 keidanren 1997年 8月号 巻頭言

迅速な意思決定のために、権限と責任の明確化を

今井副会長

今井 敬
経団連副会長


市場ニーズの多様化や高度情報化の進展につれ、世界の企業は、国や業態を跨がって、人材・情報・資本等の経営資源を急速に移動させ、事業活動を積極的に展開している。

経済のグローバル化は一段と進んでおり、わが国も、国際的なハーモナイゼーションを確保する観点から、企業の税制・年金・組織といった、諸制度の抜本的な改革を迫られている。

とりわけ、独禁法や商法の一部改正による、企業組織制度の改革は、生産性の向上や経営風土の刷新に繋がることから、企業の活性化にとって不可欠である。50年ぶりに行なわれる持株会社の解禁も、その第一歩といえる。

同時に、市場競争が激化し、生存と淘汰の峻別が進む中では、企業自身も、自らの組織を、変化に柔軟に対応できるものへと変革しなければならない。

そのポイントは、迅速な意思決定のための、権限と責任の明確化である。先ず経営トップは、成長のシナリオを踏まえて、手がける事業領域の選択、投入する経営資源の配分、適正な人事配置に専念すべきである。そして、管理部門のスリム化、事業部門への大幅な権限委譲に加えて、組織階層のフラット化、課題に応じた組織構成の弾力化等を図っていかねばならない。加えて、経営トップから社員一人ひとりに至るまで、自分の責任を貫徹して、自己完結的に業務遂行することが強く求められる。すなわち、社員は当事者意識を持って、果たすべき目標を事業部門長にコミットする、事業部門長は厳正に評価して束ねた上、事業部門として果たすべき役割を社長にコミットする、そして、社長は各部門のコミットを統合して、その実行を株主にコミットしていくのである。

今後わが国においても、社内カンパニー制や分社化を導入する企業が増えてこようが、このような経営ソフトの革新こそ、強靱な企業体質を構築する方途と考える。

(いまい たかし)


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