月刊 Keidanren 1999年 6月号 巻頭言

景気の本格回復に向けて

今井会長 今井 敬
(いまい たかし)

経団連会長

経済再生を旗印にする小渕内閣では、昨秋以来金融安定化策、緊急経済対策等需要面からの景気対策を矢継ぎ早に講じてきました。この結果、各種の経済指標からみるかぎり、わが国経済は最悪期を脱し、景気悪化は下げどまりつつあると思われます。しかし、今後民主導で景気の本格回復が実現するかが、日本経済の再生、再活性化を考える上で重要なポイントになります。

マクロの需給ギャップが30兆円以上とみられる経済に、現在の危機的な財政状況を放置したまま、カンフル的な総需要拡大策を繰り返すことは、あまりに問題が多いと考えます。

むしろ、これからはマクロ経済を慎重に運営しながらも、できるかぎり迅速に、供給構造を抜本的に改革し、産業の競争力を回復する必要があります。そのためには、産業の側で自主的に過剰設備、過剰雇用、過剰債務といわれる三つの過剰の解消に早急に取り組まねばなりません。

特に、過剰設備の解消は民間企業が「自立、自助、自己責任」で進めるものですが、政府にも商法、税制の改正に加えて、雇用のセーフティ・ネット等の整備に努めていただく必要があります。政府と民間がそれぞれの役割分担を確認しながら、責任を果たすことで、供給構造の改革がはじめて進みます。

産業の競争力強化のためには、高コスト構造を是正し既存産業を活性化するとともに、規制緩和や戦略的技術開発等を通じて新事業・新産業を創出し、将来のリーディング産業も育成していかねばなりません。こうした短期、中長期の構造改革を切れ目なく実現することで、民主導の景気の本格回復を21世紀の経済成長につなげることが可能になります。何卒、皆様方のご理解と、ご支援を心よりお願い申しあげます。


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