月刊 Keidanren 1999年 7月号 巻頭言

明確な役割分担に基づく官民の協力を

熊谷副会長 熊谷直彦
(くまがい なおひこ)

経団連副会長
三井物産会長

「小さな政府」の実現に向けて、従来政府が行なっていた分野においても、民間の知恵、ノウハウ、資金等を活用する形で、官民が協力する機会が増えている。

民間が主体となって社会資本整備を行なうPFIや、海外における発電所や上下水道等の民活インフラ事業では、より効率的な整備・運営が可能となるし、経済戦略会議や産業競争力会議では、従来の審議会方式とは異なり、経済界の意見や要望を実質的に反映させていくことで、より効果的な政策立案が期待できる。

国際的なルールづくりや協議の場においても、OECDに対するBIAC、APECに対するABACのように民間諮問機関という形で、以前からオフィシャルに民間意見の吸上げが行なわれている。通商交渉の場であるWTOに関しても、民間の意見を政府に対してより積極的に反映させていこうと経団連では提言しているところである。通商交渉は政府間の協議事項ではあっても、貿易や投資といった経済活動の主体はあくまで民間であり、タイミング良く有効な交渉を行なっていくためにも、官民の密接な連携が必要と考えている。

今後もPFIをはじめ、いろいろな分野で官民の協力が進展していくであろうし、経済の活性化のためにもできるかぎり協力していくべきであるが、その際留意すべき点は、何よりも官民の役割分担と責任の明確化である。役割も責任もあいまいなままでは、かえって非効率を生むおそれがある。また官民の緊張関係を維持していくことも重要である。PFIや民活インフラのような事業では、政府の支援措置なしでは推進が困難であるが、民間も自立、自助、自己責任の原則を忘れてはならない。政府も、本来政府が責任をもってやるべきことまで民間に押し付けたりすることがあってはならない。さらに、官民の協力が公正に行なわれていることを担保する措置として、透明性の確保も重要な要件である。こうした点に注意しながら、官民協力を積極的に進めていく必要があろう。


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