月刊 Keidanren 1999年10月号 巻頭言

高度情報化社会に向けて

岸 副会長 岸 曉
(きし さとる)

経団連副会長
東京三菱銀行頭取

21世紀が目前に迫る中で、情報化革命は着実に進行している。情報インフラが急速に整備され、われわれがアクセスできる情報は質・量ともに飛躍的に向上し、アクセスのスピードも長足の進歩を遂げている。「通信白書」に拠れば、平成10年度におけるわが国のインターネット利用人口は前年比500万人強増加して1,700万人に迫る勢いであるし、インターネットの企業普及率も80%に達したという。

今後の企業経営にとって、この流れに的確に対応することは非常に重要な課題である。米国の例を見るまでもなく、個人の生活や企業のビジネスの場において、インターネット等の情報アクセス手段を利用する機会が今後ますます増加することが確実視されているからである。このため金融界においても、より高度な金融商品・サービスをお客様に迅速に提供することを目指して、IT投資が一段と活発化している。

こうした中、さる7月に経団連は「デジタル・ニューディール構想推進のための5ヵ年計画に関する提言」を発表した。この提言では、インターネットビジネスに代表される情報技術の発展が、豊かな国民生活の実現、産業競争力の強化、政府・官公庁の諸サービスの効率性向上に大きく資するものであることを主張した。

私は、この提言の中で、特に「情報リテラシー憲章の策定と教育情報化の推進」に注目している。来るべき高度情報化社会の基盤整備の第一歩は、次代の情報化社会を担う若い世代に十分な教育機会を与えることであると考えるからである。そのためには、まずハード面では、例えば全国の小・中・高等学校にパソコンを配布して、パソコンやインターネットをより身近に感じることができる環境を用意することが必要であろう。加えてソフト面では、現場の教職員がインターネット等を十分に活用できるような措置を講じることが欠かせない。そうした投資を重点的に行なうことによって、新しい情報化社会に積極的に対応できる優秀な人材が育ち、わが国の情報分野における国際競争力が着実に向上するものと期待する。


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