月刊 Keidanren 1999年11月号 巻頭言

新世紀を迎える立法

片田副会長 片田哲也
(かただ てつや)

経団連副会長
小松製作所会長

民法が昨年、商法は本年と続けて施行後100年を経過し、記念行事が行なわれた。1世紀前(民法の場合1898年)には、わが国が近代国家の一員として仲間入りするために、法整備が急務であるとの背景から、独・仏等西欧近代国家の法典を参考として、政府が主導して多くの主要な法律が極めて短期間に制定されたのである。

同じ頃に制定された刑法は、1995年に全文が平仮名口語体に改められ、また民事訴訟法も98年には全面改正された新法が施行された。民法についても、本年、成年後見制度が新設される等、新世紀を控えて主要法規の見直しも活発である。

最近はグローバルな大競争時代に向けた世界的なスタンダード化、ハーモナイゼーションの流れに沿った法律制定、改正も活発に行なわれている。法環境の変化のスピードに対応して、法制審議会での審議が以前に比べて短時間で行なわれるようになったこと、そして立法府が主導する議員立法が増加していること等も特筆される。加えて、法案検討の段階で広く各方面の意見を徴するためにインターネットが利用されるなど、立法手続き・技術についても工夫が見られる。

現在も、法制審議会では会社分割法制が検討されており、倒産法の見直しも進んでいる。また、金融再生・健全化あるいは産業競争力再生のための法律も成立し、新世紀を迎える制度が順次整備されている。われわれ民間においても、コーポレート・ガバナンスの改革等、経営の健全化・効率化を推進するために自主的な改善を進め、真に国際的に通用する体制・体質の実現に取り組んでいる。

こういった官民での活動を確実な成果に結び付けるためには法律の裏付けが不可欠であるが、この観点では、税法・証取法をはじめ、基本法である商法を含む経済法規分野での対応は未だに不十分といわざるを得ない。グローバルな経営環境変化のスピードは想像を超えるものがあり、この分野での改正活動が世の中の変化に対応できていないと痛感させられる。政治の強いリーダーシップによる精力的な立法活動が一層要求され、われわれも立法に対して今後とも積極的に意見を述べ、参画していく必要があるのではないだろうか。


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