経営タイムス No.2633 (2002年6月13日)

日本経団連、税制抜本改革の断行求め第三次提言

−法人税率引き下げなど


日本経団連(奥田碩会長)は10日、「税制抜本改革の断行を求める」と題する税制第三次提言を発表した。2002年度から2006年度における税制抜本改革として、個人所得課税改革、法人所得課税改革、資産課税改革、地方税制改革および様々な政策課題と税制について提言を行った。今回の提言では、法人税率の引き下げ、研究開発の促進をはじめとする法人税制の抜本改革、薄く広くの観点に立った個人所得税の見直し、資本市場活性化に向けた二元的所得税の導入――がポイントである。概要は次のとおり。

税制第三次提言「税制抜本改革の断行を求める」の概要
(PDF形式、33k)

二元的所得税の導入も

1.個人所得課税改革

日本の所得税の課税最低限は国際的に高水準であり、広く税負担を分かち合う所得税制に再構築する必要がある。また、配偶者控除、配偶者特別控除は段階的に廃止すべきであるが、給与所得控除は給与所得者の必要経費の概算控除との性格等を総合的に勘案し慎重に検討する必要がある。
年金税制については、拠出時・運用時非課税、受給時課税の原則の下で、公的年金等控除は原則として廃止し、現在停止されている特別法人税も即時廃止すべきである。また、確定拠出年金の拠出限度額を大幅に引き上げるべきである。
恒久的減税として措置されている定率減税の制度化、所得税・個人住民税を併せた最高税率の引き下げ等、現行所得税制の急激な累進税率構造を改める必要がある。
資本から得られる金融所得を、勤労所得とは別途に低率で課税する二元的所得税を導入すべきである。当面は、配当、債券償還益等の金融所得を合算の上、一律20%の源泉徴収により課税を行う簡易な制度を創設する。
住宅税制については、住宅ローン利子の所得控除制度を創設し、当面は現行住宅ローン税額控除制度との選択適用とすべきである。

2.法人所得課税改革

法人税の法定実効税率(現行40.87%)を少なくとも欧州主要諸国並みの水準(35%)まで軽減を図るべきである。
また、研究開発をわが国構造改革の根幹と位置付け、試験研究費の総額に対する税額控除等、研究開発税制を法人税法の本則として抜本的に拡充するとともに、IT投資促進税制の創設、創業・ベンチャー支援税制の拡充を図るべきである。
法人事業税の外形標準課税に係る旧自治省・総務省案には反対であるが、法人事業税が景気変動により地方財政の変動要因となっている現状を解決するため、欠損金の繰越期間を延長した上で、欠損金による控除額の一部を制限することで、利益計上事業年度に一定の事業税を課すことも考えられる。

3.資産課税改革

相続税・贈与税の基礎控除と税率につき、負担軽減を図るべきである。生前贈与と相続を通算する累積課税方式を導入し、世代間の資産移転を促進すべきである。

4.地方税制の抜本改革

地方行財政改革を徹底した上で、自立可能な地方税財政の確立を図るべきである。地方にふさわしい財源は、地方住民税等、住民個々人が負担する税である。
土地に係る固定資産税・都市計画税は、都市の活性化や企業立地を促進するためにその負担を軽減すべきである。また、建物は固定資産税評価額が時価を上回るケースも多く、評価を見直すべきである。

5.様々な政策課題と税制

不動産の流通・建設段階で多重に課されている流通税を整理・合理化し、不動産の流動化を促進する必要がある。また、地価税、法人の土地譲渡益重課を廃止し、個人の土地譲渡益課税は引き下げるべきである。
特定財源制度については、道路整備等の特定財源の受益と負担が明確という特質を活かしつつ、制度の簡素化・縮小を図るとともに、使途のあり方、負担水準も見直すべきである。
社会保障制度は、持続可能な社会保障制度を構築するため、社会保険料等の直接的な負担の増加を極力回避するとともに、国民が広く薄く負担する消費税で賄うことが不可欠である。
環境問題については、産業界は既に自主的取り組みにより成果を挙げている。環境税については、はじめに税ありきの議論でなく、その導入による効果と経済への影響について既存税制との調整等も含め、中長期的な視点に立った幅広い調査・研究を行い、それらの結果が産業界や国民が十分納得できるだけの説得力をもって示されるべきである。

6.少子・高齢化社会における活力の維持

プライマリー・バランスを回復するには、国・地方を通じた抜本的な歳出削減を進め、小さな政府の実現が大前提である。その上で、別途、大規模な歳入確保策、つまり、消費税率を少なくとも現在の欧州主要国の付加価値税率並みにまで引き上げていくことが不可避である。そのためには、まず、「益税」解消により消費税に対する国民の信頼を高めるとともに、複数税率化、内税化等の制度整備を進めるべきである。


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