経営タイムス No.2649 (2002年10月10日)

日本経団連、公的年金制度改革で提言

−現役世代と企業の負担の限界踏まえた制度への転換など


日本経団連は、7日開催の会長・副会長会議で、平成16年の次期年金改正に向け、現役世代と企業の負担の限界に軸足を置いた制度への転換などをめざす、「公的年金制度改革に関する基本的考え方」の提言を了承した。同提言は、社会保障委員会(委員長=西室泰三・東芝会長)年金改革部会(部会長=岡本康男・住友製薬副社長)を中心に7月から検討を行ってきたもので、同日付で関係方面に建議した。引き続き、具体的な制度設計について検討を行う予定。提言の概要は次のとおり。

  1. わが国の年金制度には、

    1. 基礎年金制度において、第1号被保険者の未加入、保険料未納による財政空洞化が深刻で、被用者から第1号被保険者に不合理な財政調整が行われていること
    2. 厚生年金制度において、将来の保険料引き上げでカバーする必要がある年金現価が 330兆円もの巨額に上っていること
    3. 世代間の負担と給付のアンバランスが著しいこと
    等の問題点がある。

  2. 持続可能な制度改革の方向として、

    1. 現役世代と企業の負担の限界を十分踏まえ、保険料負担に軸足を置いた制度に転換すること
    2. 年金受給者を含めた国民全体で痛みを分かち合うこと
    3. 国民1人1人が自分の責任で老後に備えるため、税制上の支援措置等、自助・共助に対する社会的なインフラを整備すること
    等が必要である。

  3. 今後の制度設計の基本的な考え方として、基礎年金については、その役割を老後生活のセーフティネットと位置付け、

    1. 国民の誰もが公正な負担を行う代わりに、一定年齢に達すれば同じルールの下で受給できる「真の」国民皆年金とする必要がある
    2. こうした制度は国による所得再配分の仕組みであり、消費を賦課対象とする間接税方式で運営すべきである
    3. その上で間接税方式への移行までの経過措置として、次回改正では、国庫負担を2分の1に確実に引き上げ、財源として消費税を活用することに加え、国民年金保険料の徴収強化や、厚生年金保険料における1階と2階の財源区分の明確化を行うことが必要である。

    また、報酬比例部分については、現役時代の保険料拠出の努力を一定程度反映させた、基礎年金の上乗せとしての性格を明確にした上で、保険料負担に軸足を置き、

    1. 保険料水準は、他の社会保険料負担の高まり、基礎年金部分の間接税方式への移行を踏まえ、20%(対総報酬比、前回改正で厚生労働省がめざした最終保険料率)を大幅に下回る水準で長期間固定することが必要である
    2. 一方、給付水準は、現行モデル年金が教養娯楽費等までも含む、高齢者世帯の平均的消費支出をほぼカバーする高い水準にあり、世代間の負担と給付のアンバランスの是正を図る観点から、既受給者を含め、大幅な引き下げを行うことが必要である。


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