経営タイムス No.2660 (2003年1月23日)

日本経団連・連合首脳が懇談

－日本経団連・奥田会長、景気回復へ〝攻めの経営〟強調
　／春季労使交渉の主要テーマで意見を交換

日本経済団体連合会（日本経団連、奥田碩会長）と日本労働組合総連合会（連合、笹森清会長）の懇談会が１６日朝、東京・丸の内の東京會舘で開催された。席上、奥田会長は、春季労使交渉をめぐる経済情勢について厳しい見通しを示し「経営は攻めの姿勢で臨むべき。そうしないと景気回復も雇用の維持・拡大もできない」と強調した。懇談では、雇用・賃金問題、社会保障・税制、企業倫理問題など春季労使交渉の主要テーマについて意見が交換された。

■ 笹森会長あいさつ

冒頭あいさつで笹森会長は、春季労使交渉の主要テーマである雇用・賃金問題や政策・制度課題にふれた。まず、「ベア決定は、産別の主体性に任せた」と説明。その上で「ベアは論外。賃下げも当然」という経営側の発言が聞こえてくるが、「経営側こそ横並びなのではないか。個別労使でしっかり議論する必要がある」と強調した。
また、日本経団連の『経営労働政策委員会（経労委）報告』が提言している総額人件費管理の徹底は、「経営側の論理であり、安上がりの労働力に頼るということではないか」と注文をつけた。
外国人の活用については、「多様な労働力活用の一策として当然、考えられる」としながらも「文化や生活習慣を考えると今できるのか。労使で協議すべき」とした。
社会保障や税制は、「トータルな検討を。パッチワーク的な対応はだめ。消費税の問題も含め議論して労使で提案しては」と求めた。
ワークシェアリングは「少子高齢化の対応手段としてきわめて有効」と指摘。その成功には「均等待遇をめぐる課題解決が不可欠」と述べた。

■ 奥田会長あいさつ

一方、奥田会長は、今春労使交渉の経済背景について、その厳しさを指摘。「日本経済は、デフレ阻止から脱却できていない。３月期決算が良くなる見通しだが、V字型の回復ではない」と強調。イラクや北朝鮮問題など懸念材料もあり、「見通しは不透明。楽観的な見方はいかがなものか」と説いた。こうした厳しい経済情勢下、「経済政策や経営は、攻めの姿勢で臨むべき」と述べ、「そうしないと景気回復もないし雇用の維持・拡大もできない。攻めの姿勢を失うと、縮小均衡におちいる」とした。
日本経団連が元日に発表した、２０２５年の日本の姿を念頭においた「ビジョン」では、消費税の問題にふれているが、奥田会長は「このことが、各方面で論議を起こしているが、社会保障の問題もすべて消費税に絡んでくる。消費税を論議することは良いことだ」との認識を示した。
また、各家庭でも家計の中身について、無駄がないかなどチェックし、「ライフスタイルをどう変えたらいいのか議論すべきである」と提案した。

■ 意見交換

意見交換では、連合側が経労委報告の提言している「人事・賃金諸制度の抜本的改革」について、「労働組合として重要な提起と感じている」と表明。その上で、「現実的にはなかなか賃金制度がオープンになってこない。制度改革のため、労使共通の土俵をつくり協議して欲しい」と要請した。
雇用問題では、連合側が、「昨年１２月の政労使雇用対策会議での合意を踏まえ、雇用創出に全力で取り組まねばならない。新卒者や若年層の雇用対策も重要」と強調。日本経団連側もこれに異論はなく「雇用の維持・確保に最大限努める」と応えた。
同時に、日本経団連側から「デフレの悪影響をもっと真剣に考えるべきだ。これ以上、デフレが進むと賃金を含めた労務費に手をつけざるを得なくなる」との厳しい見通しも示された。
賃金問題では、連合側から、(1)企業規模間の賃金格差がかなり拡大しており、中小組合員の賃金不安を招いている (2)パートタイマーの初任給が地域別最低賃金にへばりついている (3)同じ仕事であれば、時間の長短に関係なく同水準の賃金を支払うべきだ、などの発言があった。
これに対して日本経団連首脳は、国際競争力の観点から賃金水準の見直しが必要であると強調。その理由として、(1)モノの価格を国内価格と海外価格に区分けできない、いわばワールドプライスの時代 (2)中期的にワールドプライスやワールドウエッジという観点から社会のシステム全体を見直すべきであることを挙げた。
また、「経営側横並び」発言については、「日本経団連として一律に賃金を引き下げるとは発言していない。そのつもりもない」と打ち消した。
連合側は、企業不祥事問題にふれ、「企業倫理問題に真摯に取り組む」と意欲を見せた。この発言に対し日本経団連側は、「企業不祥事問題は、経営側の問題と認識している。労働組合として責任ある発言をされたことは日本の強みである」と答えた。

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日本経団連・連合首脳が懇談

－日本経団連・奥田会長、景気回復へ〝攻めの経営〟強調 ／春季労使交渉の主要テーマで意見を交換

■ 笹森会長あいさつ

■ 奥田会長あいさつ

■ 意見交換

－日本経団連・奥田会長、景気回復へ〝攻めの経営〟強調
　／春季労使交渉の主要テーマで意見を交換