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経営タイムス No.2660 (2003年1月23日)

「日本経団連労使フォーラム」開催

−多様性が活かせる社会の実現と経済再生の道探る


日本経団連は15、16の両日、東京・千代田区の東京国際フォーラムで、第103回労使フォーラム(旧日経連人事・労務管理者大会)を開催した。日本経団連として初めてとなる春季労使交渉を目前に、全国の経営トップ、人事・労務担当者ら約500人が、パネル討論、有識者の講演などを通じて、多様性が活かせる社会の実現と経済再生の道を探った。

大会初日はまず、奥田碩・日本経団連会長が「21世紀の企業経営―多様な価値観が生むダイナミズムと創造、それを支える共感と信頼」と題して基調講演を行った。
この中で奥田会長は、年頭に発表したビジョンについて基本的な考えを説明。国民が新しいかたちの成長や豊かさを実感でき、「活力と魅力溢れる日本」に再生していくために必要な具体的提案と行動指針を示した。
また、今春の労使交渉については「ベースアップは論外」と明言。さらに、賃上げ要求を掲げ闘う「春闘」は終焉したとも述べ、今後は春季労使交渉を「労使で幅広く問題意識を共有し話し合う場」としていくことが望ましいとの考えを示した。
講演の最後に奥田会長は、ビジョンの中で示した「消費税率16%」についてふれ、前提として歳出削減や社会保障制度、財政構造などの見直しが必要であることを指摘。「反論も多いが、社会構造・制度を変えるきっかけとして提言した」と述べた。また、「家計の支出費目を分析することから、新しい日本の姿が見えてくる」とも述べ、個々の家計支出費目の分析を大会参加者に呼びかけた。

続いて、政府の経済財政諮問会議議員でもある本間正明・大阪大学大学院教授が、「日本経済の見通しと構造改革の実行」と題して講演。本間氏は、民間経済が国のエンジンであることを強調し、「構造改革を経済活動の中で支持・協力してほしい」と訴えた。
パネル討論「多様化時代の雇用・人材育成のあり方を考える」では、島田晴雄・慶應義塾大学教授をコーディネーターに、西室泰三・東芝会長、樋口公啓・東京海上火災保険会長、大國昌彦・王子製紙会長が登壇。歴史的変化の中で21世紀型産業を考えるとともに、終身雇用や外国人雇用など、人事管理上の課題についても討議した。
初日最後は、「21世紀の労働運動」と題して笹森清・連合会長が講演。その中で笹森氏は、「春闘が終焉した」とするマスコミ論調などに対し、賃金に中心を置いた形から変化していることは認めながらも「春闘は終わらない」と主張。さらに「雇用を守れない経営者は退場願いたい」と、春の交渉に臨む姿勢を明らかにした。

大会2日目には、日本経団連が昨年12月に発表した『経営労働政策委員会報告(経労委報告)』をもとに、同委員会委員長の柴田昌治・日本ガイシ会長、普勝清治・全日本空輸最高顧問、和田紀夫・日本電信電話社長の3人が、経営側の基本姿勢について討議した。コーディネーターは、同委員会のアドバイザーでもある古郡鞆子・中央大学教授。(要旨次号掲載
午後に入って、今次交渉における労働組合側の要求内容や雇用・処遇のあり方などについて、また、経営側の具体的対処や考え方などについて、それぞれパネル討論を行った。コーディネーターはいずれも労働評論家の小井土有治氏。
組合側のパネル討論には古賀伸明・電機連合委員長、加藤裕治・自動車総連会長、南雲光男・サービス・流通連合会長が、経営側には丸山誠・日本電気取締役常務、松原彰雄・トヨタ自動車常務取締役、川合正矩・日本通運取締役執行役員が登壇した。
大会最後に、神野直彦・東京大学大学院教授の特別講演「日本の明日を創る」を聴取。神野教授は、構造改革に成功したスウェーデンを例に、競争ではなく、協力しあって次の日本のシステムを作りあげていかなければならないことなどを示唆した。


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