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経営タイムス No.2669 (2003年3月27日)

日本経団連が「自然保護支援10周年記念シンポジウム」

−経済界の自然保護活動推進策探る


日本経団連(奥田碩会長)は17日、東京・大手町の経団連会館で「経済界が自然保護活動を進めるために」をテーマに、「自然保護支援10周年記念シンポジウム」を開催した。奥田会長は冒頭あいさつで、1月に発表したビジョンで「環境立国を将来ビジョンの柱のひとつに掲げている」と紹介。その上で「自然環境との共存にこそ経済発展の道がある」と強調し、自然保護活動に積極的に取り組む決意を示した。シンポジウムでは、「日本経団連自然保護宣言」を発表した。

奥田会長「自然環境との共存」強調

シンポジウムには奥田会長をはじめ、日本経団連会員およびNGOなど約300名が参加。来賓として、鈴木俊一・環境大臣、吉村幸雄・世界銀行副総裁、堂本暁子・千葉県知事が出席した。

シンポジウムは3部構成で開催され、第1部の冒頭あいさつで、奥田会長は、近年、環境保全に対する企業の認識が大きく前進したと指摘。「環境保全は企業の発展につながるとともに、ビジネスチャンスとしてポジティブにとらえる時代になった」と語った。また、今年1月に発表したビジョン『活力と魅力溢れる日本をめざして』の中で、環境立国を将来ビジョンの一つの柱として掲げていることを紹介し、「今後はもう一歩踏み込んで自然環境との共存にこそ持続可能な経済発展への道があると認識して、積極的に自然保護活動に取り組みたい」との決意を表明した。

続いて来賓の鈴木大臣と吉村副総裁があいさつ。鈴木大臣は、環境と経済の統合をテーマに積極的な環境対策が必要であるとの考えを示し、環境省では「昨年末から環境と経済活動に関する懇談会を開き、経済界などの有識者と意見を交換している」と紹介。その上で、「環境と経済の統合のためにはわが国各界の英知を結集し、取り組むことが必要」と述べた。
吉村副総裁は、生活環境の破壊で人びとの生活が悪化し、世界の5人に1人が十分な生活費を得られていないと指摘、「世界が持続可能な発展を続けるには貧困問題と環境問題をともに克服する必要がある。政府や国際機関はじめ企業やNGOなど開発に携わるすべての関係者が緊密なパートナーシップのもとに協力すべきである」との考えを示した。

堂本知事は「循環型社会における自然保護活動の役割」と題する講演で、日本経団連自然保護協議会が社会貢献に携わる企業やNGO、行政などの関係者を結びつけるきっかけを提供したこと、アジアを中心とした発展途上国の環境保全に貢献したことを評価し、自然保護活動に対する日本企業の国際的評価が高まったと述べた。
さらに、地球誕生後、長い年月をかけて作り上げられた大気やオゾン層は人間の活動によって汚染や破壊が進み、また多くの生物種が絶滅の危機にあることを説明。「産業界も循環型社会への転換期において環境を考えてともに発展していく時代になった」と語った。

第2部では自然保護プロジェクトの映像による事例報告を行い、マングローブ植林大作戦連絡協議会、日本野鳥の会および積水化学工業、ねっとわーく福島潟、東京電力、トヨタ自動車が活動内容を紹介した。

NGO団体代表迎えパネル討論

第3部では、「自然保護活動に、NGOとの連携を求めて」をテーマに、NGO団体の代表者を迎えてパネルディスカッションを行った。
パネリストは高見邦雄・緑の地球ネットワーク事務局長、バイロン・シーゲル・TNC(ザ・ネイチャー・コンサーバンシー・ジャパン)ディレクター、中村玲子・ラムサールセンタージャパン事務局長、吉田正人・日本自然保護協会常務理事、野澤眞次・サパ=西アフリカの人達を支援する会事務局長、加納時男・参議院議員の6氏。
ディスカッションの中で「税制面の優遇をはじめ、活動が継続できる体制を作ってほしい」「環境活動に参加しやすい、ゆとりのある企業づくりが必要である」「企業とNGOがお互いに人事交流を行い、双方の考え方を知るべきだ」「企業とNGOはプロジェクト形成の段階から協力しあい、真の共同作業を進めてほしい」「21世紀は予防型の自然保護が求められるため、自然保護に関する知識の共有が必要」「企業、NGO、政府がそれぞれの強みを生かして使命感を共有することが大切。アプローチは違っても、お互いの違いを認め合う寛容さが大切である」等の発言があった。
また、会場からは「環境教育を受けた人がまだ政策を作る現場にいないことが問題」等の意見が出された。


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