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経営タイムス No.2684 (2003年7月17日)

「大学発ベンチャー企業」テーマに、日本経団連が「第5回起業フォーラム」開催

−早稲田大学、東京大学、創業支援活動などで報告


日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で「第5回起業フォーラム」を開催、日本経団連会員やベンチャー企業経営者ら約170名が参加した。発足からちょうど一年を迎えた同フォーラムの今回のテーマは、「大学発ベンチャー企業」。従来とは異なる視点で新産業創出のカギを探ろうと、ベンチャー企業創設の豊富な実績をもつ早稲田大学と東京大学から、大学の役割や創業支援・推進活動等の取り組みについて聴取。また、それぞれの大学から生まれたベンチャー企業8社が技術や事業内容を紹介した。

冒頭あいさつをした鳴戸道郎・起業フォーラムアドバイザー(日本経団連新産業・新事業委員会企画部会長)は、「わが国の経済再生には、新たな産業や事業の創設が必須」との考えを示した上で、過去四回の同フォーラム開催がきっかけで「企業間連携」が具体化し、新たなビジネス展開の動きが出てきていることにも触れ、同フォーラムの意義や必要性を改めて強調した。さらに、大学がベンチャー企業創設に向けて、TLO(知財移転機構)の設立や起業支援といった積極的な展開をみせていることを評価するとともに、大学と産業界のより一層密接な関係の構築と、共同研究や新事業の育成・支援への期待感をのぞかせた。
続いて、早稲田大学と東京大学が、ベンチャー企業創設の支援・推進に関連して、大学の役割や取り組みなどを紹介した。

早稲田大学

松田修一・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授は、大学が中心となり「産官学・地域一体型イノベーション」を創造する同大学の「起業家教育に関する総合支援スキーム」について説明。インキュベーションとしての施設設立や多岐にわたる起業支援、エンジェルファンドの活動などを語り、それらが大学における人材だけでなく、企業との連携によって具体化してきたことを明らかにした。
また、ベンチャー関連講座の充実や技術経営教育に注力していくと述べ、「大学は教育機能と研究機能の両方がそろっている場。挑戦させる動機づけこそ大学の役割」と締めくくった。

東京大学

渡部俊也・先端科学技術研究センター教授はまず、知的財産権を例に挙げ、国立大学で産学連携を行うことの難しさを指摘。それを踏まえ、同大学では、承認TLOである「CASTI」を設立し、大学での研究成果を技術移転という形にして産学連携の実績を積んできたこと、また、「ASTEC」という投資ファンド会社を設立し、技術移転よりベンチャー企業として活動した方が良いケースでは、そこが支援していることなどを説明した。
今後は「知的財産権マネジメント」の重要性に鑑み、法務・科学技術・ビジネスをひとつの視点で捉えた勉強会を開催し、ベンチャーアドミニストレーター育成に注力していくことなどを報告した。

両大学で誕生の8企業、技術や事業内容を紹介

その後、大学別に分かれて分科会を開催。早稲田大学からは、「セルフウイング」「舞ロジック」「アインテクノ」「フロンティアマテリアル」の4社、東京大学からは「レーザック」「メディネット」「エフェクター細胞研究所」「ペルセウスプロテオミクス」の4社が、それぞれ事業内容や経営戦略などの発表を行った。

早稲田大学発のベンチャー企業として発表を行った「セルフウイング」の平井由紀子・代表取締役社長は、早稲田大学経営専門大学院の研究成果をもとに、実践的な起業家教育プログラムの企画・開発・販売を手懸けた経緯を紹介。事業の主体となる「早稲田V−Kids」は、起業家体験を通じて小・中学生の想像力・自立心・判断力といった「人間総合力」を育成することで大きな役割を果たすことを説明した。さらに、教育コンテンツ開発、教室展開において、他企業との連携を希望していることを述べた。

また、「アインテクノ」の吉村作治・取締役(早稲田大学教授)からは、イスラム教経典であるコーランなどを音声圧縮技術によってデジタルブック化し、販売する事業の紹介があり、会場から多くの質問が出るなど、好評を得ていた。

懇親の場では、多くの出席者で賑わい、双方のメリットになる連携を求めて情報を積極的に交換する姿が見られた。


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