経営タイムス No.2686 (2003年7月31日)
第1日第1セッションは、「新たな国際政治・社会の枠組み」がテーマ。
まず、有馬龍夫・日本国政府代表が「イラク戦争後の国際環境と日本」について講演を行った。有馬代表は、イラク戦争の目的は、大量破壊兵器やテロの防止よりも、フセイン政権を倒すことにあったと述べ、その背景には、自由主義と民主主義という普遍的理念を世界に普及させようとする、アメリカの価値観・使命感があると指摘した。
さらに有馬代表は、そうしたアメリカ外交の思想と行動の具現化のひとつであり、わが国外交の基盤ともなっている日米同盟関係についても言及。日米安保の存在、米軍の日本駐留が、アジアにおける危険を劇的に抑制していると述べ、日本有事の場合には、アメリカが必ず救援に駆けつけるという日米安保体制の信憑性の維持が、アジアの平和、自由、民主主義を保つために重要であることを強調した。
続いて、国分良成・慶應義塾大学教授が「変わる東アジアと中国・日本」と題して講演。国分教授は、中国の現状について、「中華思想に基づく原理原則は放棄していないものの、経済成長を外資に頼るという歴史的に珍しい状況にあり、それゆえ協調外交を取らざるを得なくなっている」との認識を示した。その上で、今後の日中関係については、かつての情念型友好関係から実務型協調関係への移行の必要性や、両国の共通利益である環境・技術移転・物流・日本の新幹線方式採用問題などをいかに追求していくかが課題であると指摘。特に北朝鮮の非核化については、日米中関係を改めて考慮し、戦略的対応を講じるべきだと結んだ。
新幹線方式を中国に採用してもらうには何に注意すべきか。
友好のシンボルととらえず、冷静に戦略的に考えるべきである。円借款をうまく使うのも一案だ。
中国の対外投資を注視すべきではないか。
国内の安定性を考えると足元が危ないが、沿海部の企業は対外投資を考えているだろう。
アメリカの対イラン政策はどうなるか。その帰趨は中東和平、日本のエネルギー問題に大きな影響を与える。
アメリカの関心は概ね中東和平の実現にあり、イラン攻撃は考えていない。日本はイランの核と油田とを別々のものとして考えている。この問題の行方は見えてきていない。
中国に対し、日本にはどんな戦略的思考が求められるか。
日本の対中政策は経済に比べ政治的関係が遅れており、実務的な日中関係を阻害している。いかに分業体制を作るか、東南アジア・中国市場を一体化したものとしてどのような戦略をとるか、政治の努力が必要だ。
ロシア経済はまだ難題を抱えているといわれているが、どう評価すべきか。
全体として安定軌道に乗ったといわれている。変動要因はあると思うが、今後、ダイナミックな経済のテイク・オフがあるのではないか。