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経営タイムス No.2686 (2003年7月31日)

日本経団連・東富士夏季フォーラム

第1日第2セッション/「国際経済・社会における日本のあり方」

講演「わが国の対外戦略と政治の役割」

−前衆議院議員・与謝野馨氏

講演「農業保護の源泉とWTO農業交渉」

−東京大学大学院教授・本間正義氏


第1日第2セッションは「国際経済・社会における日本のあり方」をテーマに、与謝野馨・前衆議院議員と本間正義・東京大学大学院教授が講演。その後、質疑応答と討議を行った。

「わが国の対外戦略と政治の役割」と題して講演した与謝野氏はまず、「本来の政治主導とは、国民全体の感情的世論とは一線を画しているもの。粘り強く国民に説明して説得するのが政治家の役目」と述べ、政治家側のそうした努力が欠けていると指摘。その上で、「トップのリーダーシップ不在のまま、勘違いの政治主導が横行している」と現在の政治に苦言を呈した。
また、日本が直面している歴史的課題のうち、当面の対外戦略で特に重要な点として(1)日米中の3国関係への対応(2)地域経済連携への取り組み――を挙げた上で、日米中3国関係の将来の方向性については、(1)日米の良好な同盟関係の維持(2)日韓関係の強化――が重要であるとした。
最後に、今後の日本の通商戦略については、日本自身の利益を守るためにFTA(自由貿易協定)が必要であり、「日本経団連には引き続きFTAを支持してほしい」と要望した。

次に、本間教授が「農業保護の源泉とWTO農業交渉」をテーマに講演。本間教授はまず、「日本の場合、農産品価格が高いことだけではなく、保護による外部効果(農業保護の社会的費用)が大きいことが問題」と説き、日本農業の構造的問題である規模拡大を阻止する要因として、株式会社などの参入規制を挙げた一方、日本食の食材輸出や海外進出も今後あり得るとの考えを示した。
また、今年9月に開催予定のカンクン閣僚会議でのWTO新農業交渉の展開については、「農業交渉が失敗に終わり、WTOが機能不全に陥るなら、農業保護による社会的費用の拡大が世界中に広がる」と警鐘を鳴らした。

質疑応答・討議

<日本経団連側>

IMDの国際競争力比較調査で、日本がボトムレベルの評価となったのは、日本経団連が優先課題項目として挙げた項目である。日本はこれらの弱い項目を克服できれば強くなれる。日本人の意識を変えていくことが重要だ。

<与謝野氏>

日本のODA支出は、環境や教育、医療等にシフトしたほうがよいのではないか。ソフト面で日本が貢献する方向に変えていくべきだ。

<本間教授>

構造改革とは、生産性の低い分野から高い分野へ資源を移行することで、農業では離農を進めることである。余っているのは、米ではなく農家だ。教育分野は農業以上に遅れている。企業に人材育成のゆとりのない今日、大学が人を育てて送り出すことが求められている。

<日本経団連側>

世界的に食糧問題が深刻になると考えるべきでないか。

<与謝野氏>

日本はカロリーベースで食糧自給率が40%まで落ちている。日本が一定規模の食糧自給率を維持することは必要だ。

<本間教授>

食糧問題は、単に分配の問題ではない。技術的に各種の制約を取り除くことで、これまでも解決してきた。

<日本経団連側>

日米FTAについて、国内の政治的反発などでやや否定的だと伺ったがなぜか。

<与謝野氏>

日米間の貿易品目で、日米でぶつかる品目が多く、途上国より政治問題化しやすい。


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