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経営タイムス No.2687 (2003年8月7日)

講演「政治システムのあり方と経済界の役割」

−経済界はもっと政界に圧力を/米コロンビア大学教授・ジェラルド・カーティス氏


第2日第2セッションは「政治システムのあり方と経済界の役割」がテーマ。コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が、日本社会と政治の現状を踏まえ、日本の政治システムが抱える問題を分析、政治家の役割や、官邸と自民党との関係、経済界の政治とのかかわり方などについて講演を行った。

カーティス教授はまず、「政治家と官僚、官邸と自民党、与党と野党、財界と政界間における非公式な調整メカニズムがうまく機能していた55年体制が経済大国になって崩壊した」と指摘した上で、「新しいメカニズムをもたらす改革は不完全であり、中途半端なものに終わる可能性もある」との見解を示した。
また、政治家の役割については、「政策をつくるのは、官僚ではなく政治家だといわれるが、そのような国はひとつもない」と述べるとともに、政治家を支えるスタッフが政策をつくることの重要性を説き、「本来の政治家の役割は、官僚を使って方向性を決定することだ」と語った。
さらに、政治家と官僚の関係に新しい考え方が必要だとして、「政治家が政策をつくることにこだわれば、それは政治家の官僚化である。スタッフのいない政治家がよい政策をつくれるはずはない」と警鐘を鳴らした。
また、カーティス教授は、官邸と自民党との関係についても触れ、「派閥による調整機能がなくなっており、官邸と自民党の権力の二重構造がますます深刻になった」と分析。さらに日本の特徴として、総理大臣の戦略チームの中に抵抗勢力が存在することを挙げ、「総理を支持できない者が、その地位から降ろされるようにならないと、政策を重視した政権は生まれない」と語った。

経済界と政界の関係については、圧力団体の存在が民主主義には不可欠であるとした上で、「圧力団体が大きなパワーを持たなければ民主主義は機能しない。日本経団連が政界に対して、やるべきテーマについて圧力をかけなければならない」と述べるとともに、日本経団連が政界に十分圧力をかけていないのではないかとの見方を示した。
加えてカーティス教授は、政界への圧力のかけ方のひとつとして政治資金を挙げ、企業献金を禁止している国はほとんどなく、企業献金があるのが普通の姿であると説明。日本経団連が新方式による政治寄付を行うことに関連して、「日本経団連が政党の政策を評価することはよいことだが、政策の優先順位をつけることが必要だ」として、優先すべきトップ10の政策を決定し、政党に提示すべきとの考えを明らかにした。
最後にカーティス教授は、政治資金以外でも政策に影響を与える方策を考えるべきだと述べ、その方法として、(1)政策提言できるシンクタンクの設立(2)必要な政策への理解を国民に呼びかける広告活動等の実施(3)政治資金の透明性を高めるNPO(非営利組織)の設立や支援――などを示し、「日本経団連は政治に圧力をかける新しい方法を考えるべきだ」と訴えた。


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