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経営タイムス No.2693 (2003年9月25日)

21世紀政策研究所、「構造改革の加速」テーマに小泉首相招きシンポジウム

−小泉首相「改革の芽を大きな木に」


21世紀政策研究所(豊田章一郎会長、田中直毅理事長)は17日、東京・大手町の経団連会館で、「構造改革の加速」をテーマに第30回シンポジウムを開催した。同シンポジウムでは、小泉純一郎・内閣総理大臣が来賓として講演。「出始めた構造改革の芽をつぶすことなく大きな木に育てていくのが私の使命」として、今後も構造改革路線を堅持していく決意を述べ、経済界の一層の協力を求めた。

田中理事長、郵政民営化の必要性を強調

シンポジウムの冒頭、あいさつに立った豊田会長は、「各種の構造改革は総理のリーダーシップの下、この2年間で着実に進んでいるが、多くは道半ばにある」と指摘。問題を改めて整理し、構造改革の加速のためには何が必要か、「総理の忌憚のない考えを、率直に伺いたい」と述べた。

ついで、田中理事長が、構造改革の必要性を郵政民営化に絞って解説した。
この中で田中理事長は、郵政事業改革を小さな問題だとする一部の意見を批判。郵政現業関連人員数が28万6000人と、国の行政機関職員数の3分の1強を占める事実を挙げ、国が持ちつづけることへの疑問と危惧を指摘するなど、郵政事業改革・民営化が (1)財政再建 (2)金融秩序の正常化 (3)地方行政改革 (4)中央行政改革――に重大なかかわりをもつ、構造改革の中央に位置する課題であることを強調した。
さらに田中理事長は、郵政民営化によって切り捨てられ、諸サービスの恩恵を受けられなくなる地域が出るとの意見に対しては、コンビニエンスストアや宅配営業所などの全国展開が相当に進んでいる事実を示すとともに、これら民間業者が現在展開している事業の多様さと質の高さを挙げるなど、民間ネットワークの充実ぶりを指摘。民間業者こそが、地域のきめ細かいサービス需要に応えていけることを主張した。
最後に田中理事長は、郵便事業が恒常的かつ深刻な赤字体質に陥る懸念が大きく、また郵貯事業も長期的には採算確保が難しくなるとして、「郵政事業改革・民営化はもはやするかしないかではなく、いかにして早急になすべきかの問題であり、さもなくば『第2の国鉄』になりかねない」と述べ、改革加速の必要性を訴えた。

■小泉首相講演

続いて登壇した小泉首相は、「郵政事業民営化が官の構造改革における最大の問題」とした上で、「私の構造改革路線に対する日ごろの経済界の支持にはたいへん感謝している。出始めた構造改革の芽をつぶすことなく、大きな木に育てていくのが、これからの私の使命だ。始めた改革をあと3年は続けたい」と述べ、20日の自由民主党総裁選勝利への意欲と自信を示した。また総理は、郵政公社の完全民営化に向けてのスケジュールについて、04年秋には、どのような民営化を行うかを経済財政諮問会議で検討し、07年4月には民営化を実施したいとの考えを述べた。
このほか小泉首相は外交・内政の課題についても言及。外交については、日米同盟と国際協調重視を基本に展開していくとし、内政面では、景気対策を求める声が強いことなどに関して、「今年は財政が苦しい中、2兆円の減税を実施しているのに酒・タバコの2000億円の増税ばかりが取り上げられる。来年度も1兆5000億円の先行減税を考えている」と述べ、理解を求めた。
最後に小泉首相は、電波法改正という規制改革により可能となったICタグを活用した民間企業の事業努力の実例をいくつか示した上で、民間に後れをとっている官の構造改革加速の必要性を改めて訴え、講演を締めくくった。

社会保障制度等で質疑応答

小泉首相講演後には、質疑応答が行われた。この中で、公的年金等の社会保障制度につき、負担増が不可避の部分の財源には消費税を引き上げて充てるべきではないかとの奥田ビジョンでも示された点についての質問に対して小泉首相は、「徹底的な歳出削減の前に、現行の年金制度のまま消費税を引き上げれば、被保険者、受給者の双方に不満が残る。郵政民営化で株式会社化となれば相当の株式売却利益も生じるだろう。今、消費税を引き上げることについては、国民の理解が得られない」として、まず年金制度の給付面などを見直す必要があるとの考えを示した。
また、WTO、FTAについての質問には、国内農業の構造改革を進めつつ、わが国全体としての国益追求の観点から精一杯努力する旨表明した。

閉会に先立ってあいさつした奥田碩・日本経団連会長は、「構造改革断行に向けての総理の熱のこもった講演を伺い、心強く感じた。企業も競争力強化に向け努力を続けているが、政府も規制改革、税制改革などのスピードアップを図っていただきたい」と述べ、総理の一層のリーダーシップ発揮を求めた。


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