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経営タイムス No.2698 (2003年11月6日)

日本経団連が商流・物流システム効率化で提言

−高コスト構造是正へ/基盤整備を具体的に提案


日本経団連は10月21日、「商流・物流システムの効率化に関する提言」を取りまとめ発表した。同提言は、産業界全般に係る商流・物流システムが直面している課題を、(1)高コスト構造の是正 (2)高齢化社会への対応 (3)循環型社会形成への対応――の3つに整理した上で、企業が主体的に取り組むべき3つの解決方策について提言している。あわせて政府に対しては、高コスト構造の是正を図るため、規制改革を中心に、インフラ整備など17項目の具体的な基盤整備を求めている。

このうち、高コスト構造問題に関しては、欧州の港湾に比べ、約2倍の水準にある港湾利用料や物流コストを押し上げているインフラ未整備の状況、製造業と卸売業、小売業全体をカバーしたサプライチェーン上に存在する約60兆円・100日分の完成品在庫など、具体的な事例を列挙した上で、その是正の必要性を強調。さらに、民間で解決することができる課題については、いたずらに行政に頼るだけではなく、企業自らが主体的に取り組むことが重要であると主張している。

<企業自らが取り組むべき解決方策>

第1は、日本的商慣行の見直しである。日本経団連の流通委員会委員を対象に今年8月に行ったアンケート調査では、「商慣行とわが国の高コスト構造との間には何らかの関係がある」と回答した企業が7割強に達した(図参照)。特に「返品」「多頻度小口配送」「リベート・協賛金」などについて、高コスト構造是正のために見直すべきとの回答が多かったことを踏まえ、経済合理性や消費者利益、取引の透明性・公正性・開放性の観点から、不断かつ着実な見直しを求めている。

商慣行と高コスト構造との関係

第2は最適なサプライチェーンの構築である。多くの企業がその構築に現在取り組んではいるものの、ボトムアップ型のアプローチによる部分最適化に止まっていることを指摘。全体最適の観点から抜本的にビジネスプロセスを見直し、効率的なサプライチェーンを構築することの重要性を訴えている。さらに、そのためには、企業の枠を超えた情報共有などの「協働」が不可欠であるとし、経営トップ自らが先頭に立って、企業間協働のルール作りや取引プロセスEDI(電子データ交換)、商品コードの標準化促進など、最適サプライチェーンの構築に向けた基盤整備に積極的に取り組むことが必要であると指摘している。

第3は共同集配送の促進である。都市内物流などの効率化を図るためには、業種別一括物流や共同集配送の普及促進が欠かせないとし、荷主、物流事業者ともに、お互いの課題を双方で認識し、効率化のメリットを相互に共有できるよう意識改革を図っていくことが重要であるとしている。

<政府が行うべき基盤整備>

こうした民間事業者の取り組みを後押しするために、政府に対しては、輸出入・港湾諸手続きのさらなる簡素化や、港湾の24時間・364日フルオープンに向けた体制整備、費用対効果の高い空港・高速道路・スーパー中枢港湾の早期整備など、17項目の基盤整備を要望。これらの実現を、政府・与党に働きかけていくこととしている。


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