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経営タイムス No.2710 (2004年2月19日)

日本経団連、東海地方経済懇談会を開催

−企業の活力で新たな発展の時代へ

−内需主導の経済成長強調/奥田会長「愛・地球博」への期待も


日本経団連(奥田碩会長)は12日、愛知・名古屋市内のホテルで東海地方経済懇談会を開催した。同懇談会の基本テーマは「企業の活力で新たな発展の時代を目指す」。日本経団連の奥田会長や槙原稔副会長、香西昭夫副会長、千速晃副会長、西室泰三副会長、樋口公啓副会長、柴田昌治副会長はじめ、共催団体の中部経済連合会や東海商工会議所連合会から約150名が参加し、東海経済の現状や道州制、産学官連携、社会資本の整備、観光振興、知的財産権などについて意見交換を行った。

冒頭のあいさつで奥田会長は、同日の午前中に会場を見学した「愛・地球博」について触れ、21世紀最初の国際博覧会である今回の博覧会が21世紀の地球社会への夢と希望を育む場となるよう期待を寄せた。
次に奥田会長は、緩やかな回復基調にある日本経済を、個人消費や住宅投資など家計部門を主役とする内需主導にし、持続的な成長とすることが今後の大きな課題であると主張。そのための鍵として「企業の活力」を挙げ、コスト削減効果をめざした「後ろ向きのリストラ」ではなく、新たな需要や雇用を創出していく「攻めのリストラ」を強化しなければならないと述べた。
さらに奥田会長は、経済の活性化には地域の活力を引き出すことが不可欠であり、構造改革特区や昨年10月に政府が設置した地域再生本部による諸制度を活用し、地域の特色ある産業の育成に結びつける必要があると述べるとともに、三位一体改革の推進と、真の地方分権を進めるための「州制」導入の検討を呼びかけた。

■ 活動報告

活動報告では、日本経団連から、通商政策への取り組み、環境問題への取り組み、税制改正について報告した。

槙原副会長は、日本の通商政策の課題として (1)国内構造改革の推進 (2)通商政策の推進体制――を指摘。このうち、国内構造改革の推進については、特に農業問題への対応が重要であるとし、構造改革の推進による競争力強化に向けた姿勢を諸外国に強くアピールする必要があると語った。

環境問題への取り組みについて千速副会長は、1997年に「環境自主行動計画」を策定、フォローアップ結果からも着実に成果を挙げていると報告。いわゆる環境税については、景気回復を妨げ、国内空洞化を促進しかねないことや、エネルギー課税は既に過重であることなど、多くの問題を含んでいると指摘した。

西室副会長は平成16年度税制改正において、欠損金の繰越控除期間の延長や住宅ローン減税の単純延長など、大きな成果が得られたと評価した。しかし、減価償却制度の見直しや日本版LLC(有限責任の人的会社制度)の導入などの積み残しがあるとし、「平成17年度以降の改正での実現に向けて強力に訴えていく」との意向を示した。

参加者からは、東海経済の現状と中小企業のダイナミズム向上、道州制について報告。東海経済の現状については、「他地域に比べよい状況にある」とした一方、グローバル化の進展による激しい競争の中で、中小企業は厳しい経営が続き、大企業に比べ景気回復が遅れていると説明。税制改正など制度面からのサポートが必要であるととともに、「中小企業自身の技術の推進とやる気が大事」と語った。

道州制については、交通機関の発達等により活動範囲が広くなっていることから、地方に広範な自治が必要であるとした上で、道州制を考える際の留意点として、(1)単なる県の合併のような中途半端なものにならないこと (2)首都機能移転も含めて議論する――ことを挙げた。

■ 自由討議

自由討議では、参加者から、産学官連携や、国際競争力強化のための規制緩和、観光産業の振興、知的財産の問題、リニア中央新幹線の早期実現、名古屋港の整備、広域防災拠点の早期整備などについて意見が出された。

これらの意見のうち、産学官連携と観光の振興について柴田副会長は、日本経団連が科学技術立国の実現のために産学官連携の推進に積極的に取り組んでいることを報告するとともに、観光の振興については、訪日外国人観光客誘致が日本の課題であり、そのためにビザ発給の制限を緩和する必要があることに言及。国土交通省と連携しつつ、法務省や外務省など関係方面に抜本的な規制緩和を働きかけていくと語った。

樋口副会長は防災問題への対応について、大規模地震が日本の経済社会に多大な影響を与える危険性を指摘し、「防災は行政だけに任せず、経済界も積極的に参加して、民間の知恵を提供する時代となっている」と、官民が防災のために連携することの重要性を訴えた。

香西副会長は、日本企業の国際競争力の維持・向上には知的財産が鍵であるとした上で、知的財産の大きな課題のひとつとして職務発明問題を挙げ、合理的なプロセスで取り決めたルールによる対価は尊重すべきとの見解を示した。

社会資本整備については奥田会長が総括の中で言及。名古屋港の整備については、港湾は重要なインフラであり、「地域の生活基盤、さらに地域の自立という観点からも着実に整備していくことが基本的には必要だ」との考えを述べた。また、リニア中央新幹線については、開業した際にははかり知れないさまざまな効果が期待できると述べた一方、実用化にはコストの低減化が何より求められるとし、「コスト低減のためには、技術開発はもちろん、官民が知恵を絞って取り組んでいく必要がある」と語った。


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