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経営タイムス No.2712 (2004年3月4日)

アナン国連事務総長来訪/日本経団連が懇談会開催

−アナン事務総長、グローバル・コンパクトへ理解と協力求める

−奥田会長、平和維持へ国連の重要性強調


日本経団連(奥田碩会長)は2月23日、東京・大手町の経団連会館で国際連合(国連)のコフィー・アナン事務総長との懇談会を開催した。日本経団連からは奥田会長はじめ槙原稔副会長、西岡喬副会長のほか、小林陽太郎・富士ゼロックス会長、大國昌彦・王子製紙会長、塙義一・日産自動車相談役名誉会長ら、「国連グローバル・コンパクト」に参加している企業の代表も出席した。懇談のなかでアナン事務総長は、世界の新たな諸課題解決に向けた国連の取り組みについて述べるとともに、人権や労働基準、環境の3分野における9つの普遍的な原則への企業の指示・実践を推奨するグローバル・コンパクトについて説明、日本経団連に理解と協力を求めた。

懇談の冒頭で奥田会長は、テロや紛争、貧困など、世界各地でさまざまな問題が後を絶たないことから、「世界平和と安全を維持する国連の役割はますます重要となっている」と強調した。その上で、同時多発テロなどの脅威に対する国連や安全保障理事会の役割など、新たな課題も山積していると指摘し、日本でも国連の役割と日本の果たすべき役割について関心が高まっていると述べた。

続いて、アナン事務総長は、国際テロや大量破壊兵器、貧困、感染症など、世界が21世紀に直面している新たな課題を解決するために、国連が最も効果的な機関となるよう、昨年11月に「ハイレベル・パネル」を設置し、検討していると説明した。
その上で、新たな課題に対応するために、企業が果たす役割はきわめて大きいと指摘し、そのためにアナン事務総長自身が1999年に「国連グローバル・コンパクト」を提唱したことを紹介。アナン事務総長は、グローバル・コンパクトで提唱している人権や労働基準、環境などにおいて、価値観と責任ある取り組みを企業が共有しないと、グローバル市場は非常に脆弱なものになるとの懸念を示した。

また、グローバル・コンパクトについて、70カ国以上から1200社を超える企業(日本企業は14社)が参加しているとした上で、より多くの日本企業が参加するよう、日本経団連に協力を呼びかけた。
さらにアナン事務総長は、今年夏にアメリカ・ニューヨークで、グローバル・コンパクト参加企業によるサミットを開催予定であることを明らかにした。

自由懇談ではまず、奥田会長が「イラクをどのようにして平和な状況に戻すのか」と質問。それに対してアナン事務総長は、(1)6月30日の選挙の実施は不可能 (2)6月30日までにアメリカからイラクへ権限を移譲するとのデッドラインは尊重すべき――などの内容を盛り込んだ報告書を、明日(2月24日)発表すると述べるとともに、「6月30日までに平和的な体制をつくるために、国連としてもイラク側と相談をしている」と語った。また、国連としては、イラクの新たな憲法制定にも協力し、選挙が実施できるような法的な枠組みをつくる方向にもっていきたいとの考えを示した。
さらにアナン事務総長は、選挙を実施するためにも、イラク国民が平和で安全な生活を送るためにも、イラクの状況が安定するまでは多国籍軍にイラクに留まってもらう必要があると語った。

このほか、グローバル・コンパクトへのアメリカ企業の参加状況について問われたアナン事務総長は、「アメリカ企業の参加のペース(現在69社)はほかの国よりも遅いが、大手企業が参加するようになってきている」と述べ、着実に参加企業が増えているとの認識を示した。

グローバル・コンパクト

「グローバル・コンパクト」は、1999年に国連のアナン事務総長が提唱し、翌2000年に国連本部で正式に発足した、企業による自主行動原則。参加した世界各国の企業が、人権の保護・尊重、強制労働の排除、児童労働の実効的廃止、環境保護のための技術開発・普及の促進など、人権と労働基準、環境の3分野における普遍的な9つの原則を支持・実践し、社会的責任を果たしていくことが、世界の持続的発展につながるとしている。


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