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経営タイムス No.2716 (2004年4月1日)

次代のコア事業育成へ

−日本経団連が報告書を発表

−経営者のリーダーシップなど、成功への4視点を示す


日本経団連の新産業・新事業委員会(高原慶一朗委員長、原良也共同委員長)は3月18日、「次代のコア事業育成のために」と題する報告書を発表した。同報告書は、同委員会で行った企業内新事業推進に関するアンケート結果をもとに、各企業の取り組み状況や現状を把握し、新事業推進のための課題や改善策について検討を行い、とりまとめたもの。回復基調にある日本経済が持続的に発展していくためには、新事業創出・育成が必要とした上で、そのための要素として、(1)経営者のリーダーシップ (2)人材育成 (3)全社的資源活用のための推進組織 (4)社外資源の活用――の4つの視点を挙げ、企業における取り組みについて提案するとともに政府への要望を盛り込んでいる。同報告書の概要は次のとおり。

■新事業育成のために必要とされる4つの視点

【経営者のリーダーシップの発揮】

経営トップのリーダーシップは新事業の成否の鍵となる。経営トップが自ら将来への危機意識を持ち、現場の問題意識や社内外の技術的優位性、既存事業とのシナジー効果、消費者動向、さらには、グローバルな視点などを十分に踏まえた新事業の戦略的で明確なビジョンを示し、それを全社的に浸透させるような強力なリーダーシップの発揮が求められている。
また、アントレプレナーシップ高揚などの企業風土を醸成するためのリーダーシップ発揮も必要である。

【意識的な人材育成】

既存事業の枠組みやこれまでの経験や発想に捉らわれずに新たな事業に挑戦していく人材が必要である。このような人材は、一方で幅広い経験と知識を身に付けていることが不可欠であり、候補となる人材に対して、複数の部署をローテーションさせるとともに人事ローテーションを補完する教育を充実させるべきである。
さらに、社外で異業種間交流を行うことも幅広い知識や考え方を習得する上で有効であり、さまざまな年齢や職種、役職レベルで実施すべきである。

【全体的資源活用のための推進体制】

次代のコア事業に繋がるような新事業を追求するには、研究開発部門、事業部門、財務部門、人事部門、コーポレート部門等の既存組織の枠組みを超えて、人材、販路、技術、専門知識、ノウハウなどの社内資源を全社的に有効活用できるような、経営トップ直轄で全社横断的な協力体制を構築する必要がある。
ただし、どのような組織形態になるにせよ、新事業推進にはトップのリーダーシップと強力な支援が不可欠である。

【社外資源の有効活用】

社内の技術・人材に固執する「自前主義」から積極的に脱却をしなければならない。新事業の事業化にあたって、初期段階から社外とリスクを分担し、そのアイデアや技術、人材を採用するとともに、社内資源とシナジー効果を上げるようなスキームを設けるほか、社外と包括的な事業提携や共同研究を促進すべきである。

政府に支援策充実を求める

■政府の役割

新事業推進のためには、各社の自助努力が基本だが、一定の公的支援も必要である。さらなる発展に向け、減価償却制度の見直し、日本型LLC(有限責任会社)の早期導入、知的財産の創造への支援、コンテンツビジネス振興施策、政府補助金制度の再構築など、全体として効率的で最適な支援の充実を図るべきである。


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