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経営タイムス No.2717 (2004年4月8日)

日本経団連、西バルカン諸国外務・経済閣僚と懇談

−経済情勢や産業状況聴取

−経済交流促進策などで意見交換


日本経団連(奥田碩会長)は6日、東京・大手町の経団連会館で西バルカン諸国の外務・経済閣僚との懇談会を開催した。アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、マケドニア、セルビア・モンテネグロの閣僚から、各国の経済情勢や産業の状況などを聞くとともに、日本と西バルカン諸国との経済交流促進策などについて意見を交換した。

懇談会には、日本経団連から米倉弘昌・ヨーロッパ地域委員会共同委員長、辻亨・国際協力委員会共同委員長らが、西バルカン諸国からはアルバニアのイリル・チコ副経済相、ボスニア・ヘルツェゴビナのムラデン・イバニッチ外相、ドラガン・ドコ対外貿易関係相、クロアチアのブランコ・ブケリッチ経済労働企業相、マケドニアのアグロン・ブジャク運輸・通信相、イゴール・ジュンデフ外務次官、セルビア・モンテネグロのゴラン・スビラノビッチ外相らが出席した。

冒頭のあいさつで米倉共同委員長はまず、欧州全体の状況について言及。「今年はEU拡大や欧州憲法条約制定などのEU改革作業に世界の注目が集まっている」と述べ、EU拡大はチャレンジではあるが、欧州のさらなる発展の大きなチャンスでもあるとの認識の下、EU加盟国も加盟をめざす国も、改革に前向きに取り組んでいることを評価した。
また、西バルカン諸国については、「多様で活力があり、欧州の長い歴史の中、重要な軌跡を残してきた。拡大と進化を続ける欧州のさらなる発展の一翼を担う地域として大いに期待している」との考えを述べた上で、「日本の経済界と西バルカン諸国の間で、どのような協力が可能なのかを考えることが重要だ」として、懇談会の意義を強調した。

日本からの投資拡大など求める

次いで西バルカン諸国の閣僚がそれぞれ、自国の経済情勢や、市場の自由化・国営企業民営化の動き、外資導入に向けた環境整備への努力、欧州域内や域外との経済連携強化の状況などを説明、日本からの投資拡大をはじめ相互の経済関係発展を求めた。

このうちアルバニアは、10年余をかけて経済改革を実施し、閉鎖経済体制から市場経済に移行した結果、外国からの投資が自由になったことを説明するとともに、観光資源や鉱物・石油・石炭などの天然資源開発の余地が大きいことを強調した。
また、電気や通信、エネルギー分野の国営企業が民営化の過程にあり、日本企業が民営化のプロセスに参加することを求めた。

ボスニア・ヘルツェゴビナは、1995年に紛争が終結し、現在では政治・経済情勢も安定化していることや、市場の完全自由化を進めていることを説明した。
その中で、国内の有力な投資先として、エネルギー分野や木材関連があり、火力・水力発電所の建設も可能であると述べた。

クロアチアは、来月EUに加盟するハンガリーやスロヴェニアと国境を接しており、日本企業がEUに進出する際の足場になるとの地勢上の利点を強調、港湾のインフラ整備にも力を注いでいると説明した。さらに、日本とはすでに農産物や海産物の取り引きがあるが、これに加え、新しい分野での関係を結びたいとして、低賃金で雇用できる優秀なエンジニアをクロアチアの強みとして紹介、日本のIT産業などの進出に期待感を示した。
また、海外からの投資に関しては、窓口を一本化したことや法制度を拡充させたことを説明するとともに、今年後半には、第六回のサムライ債(円建外債)を募集する予定であることを明らかにした。

マケドニアは、ヨーロッパ、中東、アフリカの中継地点にあるという立地上の優位点について言及するとともに、限られた分野以外は外資の出資率に制限がないことや、法人税が欧州地域でも極めて低いレベルであることなどを挙げ、鉱業や農業、運輸業、観光業への外資導入の可能性と期待を示した。
また、電気事業や通信事業を民営化する予定であることを紹介した。

セルビア・モンテネグロは、援助志向の経済からビジネス志向の経済への転換を図るために、国内の諸問題に対応していると説明。さらに、欧州の中央に立地していることや、バルカン諸国と他地域をつなぐハブ港をドナウ川に有していること、高度熟練労働者が多数存在することなどを利点として、農業や食品加工、化学、機械、観光などが海外からの有力な投資対象になるとの考えを示した。
また、エネルギー、鉄道の分野を対象に、今後民営化を進める予定であると述べた。

観光客誘致への提案も

意見交換では、日本経団連側の「西バルカン諸国は、日本にとっては距離的にも遠く、なじみが薄い。相互の経済関係をもっと活発化させる方策はないか」との質問に対し、西バルカン側は、「本日の懇談会に出席している国すべてがEU加盟に努力しており、EUもすべての国に門戸を開くと言っている。したがって、西バルカン諸国の持つ利点は見えてきている。タイミングが合えばビジネスは成立する。そのためにもこのような対話の場が重要だ」と答えた。

また、日本経団連側からは、「日本では海外旅行への需要が高く、しかも従来の観光地ではない新たな旅行先が求められている。西バルカン諸国は、日本人の多くがまだ訪れたことのない貴重な観光資源を多数持っている」と指摘した上で、西バルカン諸国が1国もしくは共同で、日本に観光事務所を開設し、観光客誘致に努めてはどうかとの提案もなされた。


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