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経営タイムス No.2722 (2004年5月20日)

「多様化する雇用・就労形態における人材活性化と人事・賃金管理」

−日本経団連が提言発表/人材戦略構築の必要性など提起


日本経団連は18日、「多様化する雇用・就労形態における人材活性化と人事・賃金管理」と題する提言を発表した。同提言は、パート・アルバイトや派遣労働者などの非正規雇用の増加など、企業を取り巻く環境変化を踏まえ、労使関係委員会(普勝清治共同委員長、加藤丈夫共同委員長)で、非正規従業員の管理に焦点を当てつつ、正規・非正規の管理について再整理したもの。人材戦略の構築と展開の必要性や、従業員の活性化策などを提起しているほか、労働基準法の改正で有期労働契約の上限が3年に延長されたことや、パートタイム労働指針の改正により「短時間労働者」と「通常の労働者」間の均衡処遇の考え方が具体的に示されたことなどを踏まえ、短時間労働者の均衡処遇に努める一方、有期雇用従業員の雇止めの問題にも留意しつつ、人材の活性化と有効活用を図っていかなければならないことを訴えている。同提言で示している「有期雇用従業員の活用と人事管理の方向性」の4分類は次のとおり(同提言では、雇用形態の違いにより、「期間の定めのない雇用契約者」を「長期雇用従業員」、「期間の定めのある雇用契約者」を「有期雇用従業員」という名称を仮に用いている)。

1.長期雇用従業員の人事・処遇制度との均衡確保型

有期雇用従業員の活用を進め、職務や人材活用の仕組み・運用を、長期雇用従業員のそれと同様に行っていく方針の企業において、長期雇用従業員に適用している現行の処遇の決定方法を有期雇用従業員にも適用し、処遇の均衡を確保していくもの。ただし、長期雇用従業員の賃金制度が年功型であった場合、人件費の増加を招くことになる。また、職務の恒常性、長期雇用従業員との職務、労働条件の同一性の観点から、雇止めが難しくなる場合があることに留意すべき。したがって、この型を活用できるのは、限られた企業と思われる。

2.長期雇用従業員の人事・処遇制度見直しによる均衡確保型

前記1の型と同様であるが、均衡を確保する前に、長期雇用従業員の賃金制度を、職務特性に応じた複線型・多立型賃金体系などに改めるもの。職務特性に応じて、合理的な賃金体系・賃金水準を構築し、現行の賃金水準を引き下げることができれば、人件費の非効率な増加等は避けることができよう。

3.長期雇用従業員との担当職務の区分明確化型

企業の人材活用戦略として、有期雇用従業員と長期雇用従業員に同じ職務を担わせないもの。長期雇用従業員と有期雇用従業員の職場の職務編成を明確に区分することで、均衡処遇の確保による人件費増やトラブルを回避することができる。

4.長期雇用従業員の人材活用の仕組みと異なる制度の明確化型

有期雇用従業員と長期雇用従業員との職務は同じだが、人材活用の仕組みや運用は異なる管理を行い、処遇の均衡に努めていくもの。新入社員など育成段階にある長期雇用従業員は、職務が有期雇用従業員と同じになる場合もあるが、こういったケースについては、人材活用の仕組みが異なるということを明示しておく必要がある。

◇ ◇ ◇

いずれにしても、先行きが不透明で売上高も生産量も不安定な中で、企業は、その存続・発展に向けて、多様な人材を効率的に活用して適正かつ柔軟なコスト管理を行うとともに、さまざまな雇用・就労形態の従業員を「公正性」「納得性」などの観点で活性化していくことが肝要である。


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