日本経団連タイムス No.2729 (2004年7月8日)

日本経団連、タン・シンガポール副首相と懇談

−両国の経済情勢やASEAN地域発展への協力のあり方で意見交換


日本経団連は6月11日、東京・大手町の経団連会館で、トニー・タン・シンガポール共和国副首相兼調整相との懇談会を開催した。シンガポール側は、タン副首相のほか、チュー・タイスー特命全権大使、テオ経済開発庁長官らが、日本経団連側は、西岡喬副会長らが出席。日本・シンガポール両国の経済情勢やASEAN地域発展に向けた協力のあり方などについて意見交換を行った。

冒頭のあいさつで西岡副会長は、タン副首相が前回日本経団連を訪問した2001年秋から現在までを総括。2001年当時、非常に厳しかった日本の経済情勢が、現在は政府の構造改革努力や企業戦略が攻めの経営再構築に転じたことなどによって明るさを増しつつあることや、日本初の経済連携協定(EPA)として2002年1月に締結された日本・シンガポール新時代経済連携協定(JSEPA)が現在交渉中のタイやフィリピン、マレーシアとのEPAのベースとなっていることなどを紹介した。その上で、日本経団連としては、EPAを通じてASEAN諸国との経済連携を一層強化していきたいとの考えを強調した。

これを受けてあいさつしたタン副首相は、日本の構造改革やリストラ推進、シンガポールの通貨危機克服への努力などによって、両国経済には昨年から好転の兆しが見えると述べたのち、EPAについては、日本とASEAN各国の間で締結が進み、「シンガポールのみならずASEAN各国が利益を得ることができればよい」と、日本ASEAN間の経済連携促進に賛意を示した。

また、世界経済における不安定要素については西岡副会長、タン副首相とも、主要な問題点として、原油価格高騰やイラク・中東情勢、世界的なテロの脅威を挙げた。続いて行われた意見交換では、日本側の出席者が、中東から日本などへの石油輸送において重要なポイントであるマラッカ海峡にシンガポールが隣接していることを指摘、海上交通の安全確保策などについて質問した。これに対してタン副首相は、マラッカ海峡を中心とする海上安全確保の重要性への強い認識を示し、海峡沿岸諸国や日本、米国、国連などとも協力して、「安全保障の強化に取り組んでいきたい」と語った。

進出日系企業の業績動向も

また、シンガポール側の出席者が、「シンガポールに進出している日本企業の業績が例外なく好転している。今後もこの調子が続くと考えてよいか」と質問したことに対して西岡副会長は、国民の生活に直結している自動車やデジタル機器などの分野が好況を牽引していると指摘するとともに、中小企業や地方企業においても業績回復が見られることから、基本的には今後も好況が持続するとの見方を示した。その一方で、「景気回復の要因は内需拡大よりも米国と中国の景気に依存している部分が多く、その影響を受ける不安がある」との懸念も表した。

最後にタン副首相は、さまざまな課題に対応できるよう、国も企業も常に構造改革に努めていかなければならないことを強調。また、日本とシンガポール両国の今後の関係については、JSEPAによって「シンガポールが日本政府や日本企業にとってますます魅力的な市場になるよう努めたい」と結んだ。

【国際経済本部アジア・大洋州担当】
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