日本経団連タイムス No.2730 (2004年7月15日)

企業のダイナミズム発揮と東北産業経済活性化策探る

−日本経団連、東経連、第37回東北地方経済懇談会開く


日本経団連(奥田碩会長)と東北経済連合会(東経連、八島俊章会長)は8日、宮城・仙台市内のホテルで、第37回東北地方経済懇談会を開催した。同懇談会には、奥田会長はじめ日本経団連の首脳役員、東経連会員など約300名が参加。「企業のダイナミズムの発揮と東北産業経済の活性化に向けて」を基本テーマに、東北産業経済の活性化や広域観光事業の展開、地方分権の推進など、日本と東北の抱える諸課題について意見を交換した。

地域経済発展へ特色を
日本経団連・奥田会長、“新たな豊かさ”の提示強調

開会あいさつした東経連の八島会長は、明るい兆しが出てきた東北経済の回復をより確かなものとすべく、強い東北経済を自らの手で再構築するための取り組みを行っていると説明。2004年度は「東北の総合力発揮に向けて〜東北産業経済の活性化と広域連携の推進を〜」をモットーに、(1)産学官連携を軸とした地域産業の国際競争力の強化と地域密着型産業の育成 (2)東北の総合力発揮に向けた広域連携の推進 (3)広域連携の基盤となる基礎的社会資本の整備促進――に重点的に取り組んでいると述べた。

続いてあいさつした奥田会長はまず、現在の景気回復について、構造改革が成果を上げ始めたことや、中国の需要が拡大していること、企業が“守りのリストラ”から“攻めのリストラ”へ軸足を移したことを、その大きな要因として挙げた。その上で、日本がさらに発展するためには、資本・労働の生産性向上と、技術革新の促進が重要であると指摘。東北地域において、東北大学を中心とする大学を、技術革新のための“センター・オブ・エクセレンス”として効果的に活用して大きな成果を上げていることを紹介し、期待感を示した。
さらに奥田会長は、地域経済の発展のためには、各地域が特色を強く打ち出し、“新たな豊かさ”を提示することが求められているとして、特に観光について、「東北の強みを活かした広域的な観光を世界にアピールしてほしい」と呼びかけた。

■ 活動報告

活動報告ではまず、日本経団連の柴田昌治副会長が、最近のエネルギー政策をめぐる動向について、長期エネルギー需給見通しの策定作業が経済産業省で進められていることや、今秋より地球温暖化対策推進大綱の見直し作業も本格化することから、日本経団連は今後もさまざまな機会で提言を行い、エネルギーの安定的な供給や環境との適合を実現するような政策を求めていくと語った。

次に、政治への取り組みについて、宮原賢次副会長が説明。政策本位の政治を実現し、構造改革を推進するために、日本経団連は、第1次政策評価2月5日号既報)を参考に、自発的に政治寄付を行うよう企業に呼びかけていると述べ、参加者に理解と協力を求めた。

また、庄山悦彦副会長は、産業技術をめぐる最近の活動に関し、2006年度からの次期科学技術基本計画の策定にあたり、産業界の考える今後の科学技術政策のあり方などをとりまとめ、積極的に働きかける必要があることから、そのための検討を、産業技術委員会において6月から着手したことを明らかにした。

続いて、東経連側が活動報告を行った。
このうち、東北産業経済の活性化に向けた取り組みでは、東北インキュベーションファンドの設立やBUYベンチャー東北運動、また、国際交流事業では、「東経連・中国東北部経済交流視察団」の派遣などを紹介。広域観光事業への取り組みについては、観光産業が東北地域の発展に不可欠なものであることから、東経連は今年度より観光文化委員会を設置するなど、取り組みを強化していることを強調した。
さらに、東北地域の自立発展の基盤を形成する上で、東北の陸海空一体となった社会資本の整備促進が不可欠であるとして、日本経団連に協力を求めた。

■ 自由懇談

自由懇談では、東経連から、先端技術研究開発や、新産業・新規事業の創出、地方分権の推進、地域の情報化、循環型社会の形成と廃棄物リサイクルの促進などについて、質問や意見が出された。

これらに対して日本経団連は、「東北地方は東北大学をはじめとする知の創造拠点が数多く、ものづくりの基盤がある」(三木繁光副会長)、「いつの時代でも新産業・新事業創出のキーは、民間企業とその経営者である」(高原慶一朗評議員会副議長)、「地方で税源をもち、地方の自主性をもって決めていくことが、(地方分権の)基本的な発想」(西室泰三副会長)、「地域の情報化は、国や自治体、民間事業者が協力し合いながら進めていくのも一つの方法」(和田紀夫副会長)、「循環型社会の構築に向けて、環境自主行動計画に基づき、廃棄物の排出抑制に取り組んでいる」(勝俣恒久副会長)――などと応じた。

最後に奥田会長は総括の中で、広域観光事業について、「これからの観光はスポットではなく、ゾーンでないと成立しない」として、東北でもゾーン的な発想が必要であると述べた。
また、地方分権については、三位一体改革に加え、改革が進んだときにきちんと地方自治を実行する「人材」をどう確保するかという問題を解決する必要があると語った。

【総務本部総務担当】
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