日本経団連タイムス No.2735 (2004年8月26日)

「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」が初会合

−資金の流れ明確化強調/日本経団連、収納対策など提起


社会保険庁の組織のあり方などを検討する「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」(細田博之内閣官房長官の私的懇談会、座長=金子晃・慶應義塾大学名誉教授)は11日、首相官邸で第1回会合を開催し、社会保険庁のあり方やその課題と方向性、この会議の進め方などについて、メンバーから意見聴取を行った。

冒頭にあいさつした細田官房長官は、先の通常国会における年金法案審議の過程で、社会保険庁をめぐる問題点が指摘されたことを挙げ、「損なわれた国民の信頼を回復するには、思い切った改革に取り組むことが重要である」ことから、同会議を設置したと説明。また、先月23日に就任した社会保険庁の村瀬清司長官は、「国民の視点に立った改革に努めたい」とあいさつした。

続いて行われた意見聴取の中で、日本経団連からメンバーとして参加している矢野弘典専務理事は、社会保険庁に対する国民の信頼を回復するために早く改革案をつくり、それを表明することが重要とした上で、資金の流れを明確にすることが大事であることや、国民年金保険料の収納対策は未納原因の整理を出発点とすべきであることなどを指摘した。

ほかのメンバーからは、社会保険の理念は安心で安全な生活の基盤づくりであるとした上で、社会保険庁改革にあたっての理念を明確に掲げる必要があるとの意見や、「利用者の立場に立って、何をどうするかをきちんとすべき」「先の国会で問題となった未納・未加入問題は、情報漏洩そのものであり、認識が甘かったのではないか」「国民へのサービスについては、情報の一元化、窓口の一元化ができるのではないか」など、利用者の立場に立った業務運営を進めるべきであるといった意見や、年金に関する個人情報の保護、年金資金の不透明さなど社会保険庁が抱えている課題を指摘する発言があった。

日本経団連、持続可能な制度構築実現へ政府等に働きかけを続ける

また、坂口力厚生労働大臣は、この会議の結論の実現に向けて最大限に努力しなければならないとした上で、社会保障のあり方全般について議論している「社会保障の在り方に関する懇談会」(8月5日号既報)とのかかわりについて、「関係してくるものは互いに連携を図りたい」と語った。

日本経団連としては、メンバーとして西室泰三副会長が参加している「社会保障の在り方に関する懇談会」と、同有識者会議などを通じて、社会保障制度を財政や税制とあわせて一体的に改革し、国民の信頼・支持を得ることができる持続可能な制度構築の実現を、引き続き政府等に働きかけていく。

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社会保険庁の在り方に関する有識者会議は、年金制度の実施庁である社会保険庁の存立や事務運営のあり方について、基本に立ち返った検討を行う場として設置された。(1)社会保険業務の機能と特質 (2)社会保険業務にふさわしい組織形態のあり方 (3)民営化または外部委託できる部門の範囲――といった組織のあり方や緊急対応方策などを検討事項として議論を行い、年内を目途に中間報告を発表。その後も議論を重ねて、来年夏には最終報告をとりまとめる予定。

同有識者会議には矢野専務理事のほか、朝倉敏夫氏(読売新聞東京本社常務取締役論説委員長)、渥美雅子氏(弁護士)、大熊由紀子氏(国際医療福祉大学大学院教授)、大山永昭氏(東京工業大学教授)、金子晃氏(慶應義塾大学名誉教授)、草野忠義氏(日本労働組合総連合会事務局長)、松浦稔明氏(全国市長会社会文教委員会委員長・坂出市長)の民間有識者8名に加え、政府側から、細田博之内閣官房長官と坂口力厚生労働大臣がメンバーとして参加している。

【国民生活本部社会保障担当】
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