日本経団連タイムス No.2735 (2004年8月26日)

厚労省検討会、今後の労働安全衛生対策で報告書発表

−効率的で成果の上がる方策を/日本経団連が検討主張


厚生労働省の「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会」(座長=櫻井治彦・慶應義塾大学名誉教授)は4日に会合を開き、報告書をとりまとめた。同検討会は、企業の合併・分社化によって組織形態が変化していることや、就業形態の多様化などでさまざまな労働者の混在が進んでいること、さらには昨年、大規模事業場において爆発災害が多発したことなどを受けて、重大災害の増加を止め、労働災害発生の一層の減少を図るために、今後の労働安全衛生対策はどうあるべきかについて、今年3月から有識者11名による検討を重ねてきた。

これに対して日本経団連は、5月下旬に人事労務管理委員会労働安全衛生部会の委員会社を対象にアンケート調査を実施。あわせて6月30日には同部会を開催して、報告書骨子案について厚生労働省担当官から説明を聴取した上で、意見交換を行った。これらを踏まえ7月16日に、「検討会報告書骨子案に対する意見・要望」を厚生労働省に提出し、企業の永年の安全衛生向上に向けた取り組みを評価して、企業経営の実態も踏まえた、効率的で確実に成果の上がる方策の検討を強く主張した。

今後のスケジュールは、同検討会の報告書等を踏まえて、9月以降に厚生労働省労働政策審議会の安全衛生分科会において、労働安全衛生法令の改正に関する審議がスタートする予定。日本経団連としては、同審議会使用者代表委員と連携しながら、対応していく。
同検討会がとりまとめた報告書の主なポイントは次のとおり。

1.職場における危険・有害性の調査等の推進

重大災害が頻発した工業的業種等の事業場においては、事業者が危険・有害要因の特定や、リスクの評価等を行う危険・有害性の調査に取り組む仕組みを確立することが必要である。

2.自主的取り組みの推進と普及推進のための優遇措置

安全衛生水準の段階的な向上を図ることが必要であり、その効果的な手法が労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)である。OSHMSが確立し、安全衛生水準が高いと認められる事業場について、(1)安衛法第88条に規定される機械等の設置や移転に関する計画届を、事前チェックから事後チェックに変更する等の法令上の措置に関する措置 (2)中小企業等に対して、労災保険の特例メリット制を適用する等の経済的な措置 (3)企業名の顕彰や、OSHMSが確立されていることを表わす標章使用の許容等の社会的な評価に関する措置――をとることが考えられる。

3.一体的な安全衛生管理の構築

企業の分社化等、組織形態に関する構造的変化が進む中で、企業分割等により生じた企業グループにおいては、事業を同一の場所で実施し密接な経営上の関係がある等の一定の条件下において、企業グループ内の事業場の安全管理者等が、企業グループ内の他の事業場における安全衛生管理を併せて実施することが可能となるような仕組みが必要である。

【国民生活本部安全・衛生担当】
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