日本経団連タイムス No.2736 (2004年9月2日)

ITバブル崩壊後もシリコンバレーは健在/米国ハイテクベンチャーの最新事情を聴く

−日本経団連新産業・新事業委員会、企画部会を開催


日本経団連の新産業・新事業委員会(高原慶一朗委員長、原良也共同委員長)は8月26日、東京・大手町の経団連会館で企画部会(鳴戸道郎部会長)を開催し、ベンチャーキャピタル「グローバルカタリストパートナーズ」のマネージング・プリンシパル兼共同創設者である大澤弘治氏を迎え、ITバブル崩壊後の米国ハイテクベンチャー事情を聴くとともに、意見交換を行った。

大澤氏は、ITバブルが崩壊した2000年をピークに、株式公開や企業買収は激減し、ベンチャーキャピタルの投資も減少していたが、昨年後半から起業の状況も持ち直してきていると指摘。ベンチャーキャピタルの投資対象が、ITバブル期の通信、ITサービス、メディア・娯楽といった分野から、昨今はバイオ、ネットワーク機器、医療機器といった分野にシフトしていると説明した。

さらに、ITバブル期に登場した「シリコン〇〇」と称する、未成熟な地域クラスターは姿を消す一方、半導体・コンピュータ・ハードディスクドライブなどで数次の好不況を経験してきたシリコンバレーは、起業家やベンチャーキャピタルに好不況を相対化できる経験則が確立されているため、地域として健在であると述べた。また、起業家の絶対数は減少したが質は向上していることや、外注化が進んで、雇用は減少しているが、それによりシリコンバレーの従業員1人当たりの付加価値は上昇していると語った。
一方、シリコンバレーの人口の39%がインドや中国など外国生まれの高学歴の移民であることを指摘、「彼らが母国で起業することが、シリコンバレーにとって脅威となる可能性がある」との見解を述べた。

また、資金調達量と成功とは必ずしも結びつかないにもかかわらず、ベンチャーキャピタルが必要以上の資金を供給してしまうことへの懸念を表した。
今後の日本におけるベンチャーの方向性について大澤氏は、「ブームに終わらない起業の継続性や協力企業の母集団拡大が必要」との考えを示すとともに、ベンチャー企業にとって、資金・技術・人材のリソースであり、顧客であり、買収元でもある大企業の役割は大きいことを強調した。

【産業本部産業基盤担当】
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