日本経団連タイムス No.2737 (2004年9月9日)

日本経団連・連合首脳が懇談

−雇用・社会問題や現場力向上で意見交換


日本経団連(奥田碩会長)は7日、東京・大手町の経団連会館で、日本労働組合総連合会(連合)との首脳懇談会を開催した。日本経団連からは奥田会長はじめ西室泰三副会長、柴田昌治副会長、大橋洋治雇用委員長、加藤丈夫労使関係委員会共同委員長、鈴木正一郎労使関係委員会共同委員長、立石信雄国際労働委員長らが、連合からは笹森清会長、人見一夫会長代行、副会長らが出席。自由懇談である今回の会合では、雇用・社会保障問題や現場力の回復・向上などについて意見を交換した。

◆笹森・連合会長あいさつ

懇談の冒頭、連合の笹森会長は、(1)社会保障 (2)現場力の回復 (3)雇用――について言及。このうち、現場力については、リストラや外部委託による現場力の低下が昨今の事故や企業不祥事の原因であるとした上で、労働組合にも、経営側に不安全な点を直言・指摘する責任があると述べた。

◆奥田・日本経団連会長あいさつ

続いてあいさつした奥田会長はまず、雇用・社会保障問題は、日本の成長に対する制約要因をいかに除去するかという観点からの喫緊の課題であるとした上で、若年者や高齢者、女性、外国人の雇用をどう考え、また、新たな雇用をいかに創出するかが重要であると語った。さらに、ロボットの高性能化など、科学技術の急速な進歩が雇用に与えるインパクトは大きく、無視できない課題であることを強調した。

社会保障の問題については、社会保障制度の持続可能性が重要であるとし、保険料などの負担のあり方や年金・医療・介護を含めた制度の一体的改革について考えていかなければならないと語った。また、現場の人材力向上には、労使が強い危機感を共有して、現場でのコミュニケーションの充実を図ることが必要であるとの考えを示した。

意見交換

続いて行われた意見交換ではまず、雇用問題について、連合から、若年者や高齢者の雇用問題などについて発言があった。一方、日本経団連は、社会保障制度は税制や財政と一体的に改革することが必要とした上で、世代内と世代間の不公平をどう解消するかが重要であると指摘。雇用問題では、「パートなどの非正規労働者の増加は、新しい雇用形態のあり方として定着しつつある」と述べ、多様化する雇用へのスムーズな対処が求められるとの認識を示したほか、若年者雇用では、さまざまな要因が絡んでいることから、問題点を整理することが必要との意見などが出された。

現場力の回復・向上に関する意見交換では、連合から、(1)リストラや採用抑制、非正規労働者の増加などが事故の原因 (2)職場の安全には経営トップの意識が大事――などの意見が出された。
一方、日本経団連は、経営者が現場を知り、尊重することが重要であるとした上で、現場力の回復・向上には労使による取り組みが必要であると語った。さらに、経験や理念などの暗黙知を、システム化可能な形式知に変えることが現場力向上の手段となるとの意見も出された。

このほか、日本経団連は「環境税」について、(1)効果が極めて疑問である (2)海外での生産比率が急速に高まる可能性がある――ことから、あらためて反対を表明した。

【労働政策本部労政・企画担当】
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