日本経団連タイムス No.2738 (2004年9月16日)

日本経団連日本メキシコ経済委、ドミンゲス・ハーバード大学教授と懇談

−日墨EPA協定などで意見交換


日本経団連の日本メキシコ経済委員会(小枝至委員長)は8月31日、東京・大手町の経団連会館で、ホルヘ・ドミンゲス・ハーバード大学教授との懇談会を開催した。懇談会には小枝委員長はじめ、上原尚剛・日墨協定に関する懇談会座長ら約40名が出席。北米自由貿易協定(NAFTA)やEUとの自由貿易協定(FTA)がメキシコ経済に与えた影響や、日墨間の経済連携協定(EPA)に期待される効果、米州自由貿易地域(FTAA)の動向などについて意見交換を行った。懇談会におけるドミンゲス・ハーバード大学教授の発言概要は次のとおり。

メキシコは、1980年代前半に危機に陥った。国営企業中心のメキシコ経済は非常に効率が悪く、状況を打開するために米国との関係を見直し、94年にNAFTAが発効した。NAFTAは攻撃型の協定であり、成功を収めた。メキシコの対米輸出、米国の対メキシコ輸出は、ともに3倍以上に伸びた。米国の輸入総額に対するメキシコのシェアは6%から12%へと上昇し、ドイツや日本よりも大きなパートナーになった。メキシコの輸出額の90%を米国が占め、輸入額では3分の2を占めている。
農産物については、はじめ「NAFTAによってメキシコ農業は壊滅する」といわれていたが、そうはならなかった。メキシコの農業は大変革を余儀なくされ、非効率的な小規模農家が立ち行かなくなる一方で、非常に近代的で大規模な農業経営を導入し、成功を収めている。
NAFTA後のメキシコの主要輸出産品は、それまでの石油から、製造品やサービス、農産品へと多様化した。またNAFTAによって、メキシコ経済が米国経済の後退の直撃を受けなくなったことも特筆すべき点である。

米国以外の地域との経済関係に課題

米国との経済関係は順調に拡大しているが、他の地域との関係は問題を抱えている。
メキシコは、貿易の減少に歯止めをかける方策として、防御型の協定であるEUとのFTAや日本とのEPAを考えている。EUとの貿易が全体に占めるシェアは、90年の11%から2003年には7%に下がった。日本からメキシコへの輸出は6%から4.3%に下がり、メキシコから日本への輸出は2%から0.3%に減少した。メキシコは、こうした状況を改善しようとしているが、2000年7月に発効したEUとのFTAは、期待したほどの成果を挙げていない。

日墨EPAは9月に両国首脳の間で署名されるが、短期的な影響は、控えめなものに止まるだろう。なぜなら、日本企業が関心を持つメキシコのほとんどのセクターの開放が遅れるからである。そのため、経済活動の急激な伸びは期待できない。メキシコ経済は低迷してきており、メキシコの対日輸出もそれほどの伸びは期待できない。メキシコ経済が、米国中心である点も大きく変化しないだろう。

一方、長期的には良い影響が出てくるだろう。メキシコの経済界のトップや政治家は、成長のためのさまざまな要素を再吟味し、再構築していこうという意欲を持っている。メキシコはNAFTA、EUとのFTA、日本とのEPAをもとに、世界の中でダイナミックで力ある存在として、自らを高めるとともに、相手国にとっても大きな力となるだろう。

【国際経済本部中南米・中東・アフリカ担当】
Copyright © Nippon Keidanren