日本経団連タイムス No.2742 (2004年10月14日)

アジア開発銀行と共催でセミナー

−「アジア経済の現状と見通し」/講演聴取し意見交換


日本経団連は5日、東京・大手町の経団連会館でアジア開発銀行(ADB)との共催によるセミナーを開催した。9回目となる今回のセミナーでは、「アジア経済の現状と見通し」をテーマに講演を聴取した後、意見交換を行った。同セミナーには、日本経団連会員企業から約100名が参加。ADBからはヨンホイ・リー事務総長やイフザル・アリ・チーフエコノミスト、ウーチュル・チョン駐日代表らが出席した。

第1部では、「アジア開発展望2004年改訂版」と題し、アリ・チーフエコノミストが今後のアジアの経済成長について解説。その中でアリ氏は、「今年のアジア経済は輸出が大きく伸び、消費も好調である」とし、特に設備投資が堅調であることから、昨年の6.5%を上回る7%の経済成長が見込まれていると指摘。その上で「世界的な景気減速の流れに伴い成長は緩やかになるものの、来年も6.2%と世界で最も高い成長を続けるであろう」との見方を示し、アジア諸国の経済見通しが明るいことを強調した。一方で、リスク要因として、石油価格の高騰や中国の景気減速などを挙げ、長期的に経済成長を継続するためには、国内需要の喚起に向けたマクロ・ミクロ両面の改革などが必要との考えを述べた。

第2部では、「中国およびインド経済の長期的展望」と題して、引き続きアリ氏が分析結果について、1979年から迅速に包括的な改革を進めてきた中国は、(1)工業部門を中心とした経済特区への積極的な外国投資誘致 (2)貿易体制の自由化 (3)生産者へのインセンティブ供与――などの施策が発展の基軸となっていると述べるとともに、インドは国内産業の育成に重点を置き、91年から本格的な改革を開始したと説明。こうしたことから、80年以降、中国は常にインドを上回る経済成長を遂げており、1人当たりのGDPなどの経済指標でも、中国がインドを逆転していると指摘した。

さらに、今後は両国ともに、貧困層の削減や雇用創出などの課題に対して、適切な政策と改革を継続し、高い経済成長を達成する必要があるとした上で、2020年までの見通しについては、中国は7〜8%、インドは一定の経済改革を行うなどの条件の下で7%程度の経済成長を続けることが可能との見方を示した。最後にアリ氏は、「中国とインドは両国合わせて世界の人口の4割を占めており、大きなビジネス・チャンスが存在する。両国の台頭は、アジア経済のみならず、世界経済全体に大きな変化をもたらす」と述べた。

【国際経済本部アジア・大洋州担当】
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