日本経団連タイムス No.2743 (2004年10月21日)

労働法規委員会・司法制度労働検討部会、合同会合を開催

−労働審判制度の概要と使用者視点で意義示す/京都大学大学院 村中教授


日本経団連の労働法規委員会(藤田弘道委員長)と同委員会の司法制度労働検討部会(小島浩部会長)は1日、東京・大手町の経団連会館で合同の会合を開催した。

会合ではまず、労働審判制度における労働審判員の推薦について、最高裁から日本経団連に対して9月8日に正式な依頼があったことを事務局が報告した。
労働審判員の必要人数は、使用者側で総数500名。東京や大阪など多数の事件が予想されるところには、それぞれ115名、54名と、多くの審判員が配置され、事件数が少ないと予想されるところでも最低5人の審判員が必要となる。
日本経団連では、各地方経営者協会に労働審判員の推薦を委任し、労働関係に関する専門的な知識と経験を有する人材を最高裁へ推薦する考え。労働審判員には、企業の人事労務担当の管理職やその経験者、地方経営者協会の事務局担当者などが適任と思われる。推薦にあたっては要件を定めず、現役やOB、OGを問わず、広く人材を求める予定としている。

会合ではこのほか、政府の司法制度改革の審議会委員でもある京都大学大学院の村中孝史教授が、労働審判制度の概要と、使用者の視点から見た同制度の意義について講演を行った。村中教授の講演概要は次のとおり。

労働審判制度の特徴は、(1)解雇や労働条件変更など、急増する個別労働紛争を対象としている (2)専門的知見をもつ労使が中立・公平な労働審判員として解決に参画する (3)原則として3回以内で行われる迅速な手続きである (4)まず調停が試みられるが、その後の審判では当事者の権利関係等を踏まえ、事案にふさわしい柔軟な解決案が示される (5)不服ある当事者の異議申立で審判は失効し、審判申立時点に訴訟を提起したとみなされるなど、訴訟と連携している――ことなどが挙げられる。

労働審判制度を使用者の視点に立って考えると、第一に、労働事件の専門的紛争処理機関が司法の場に設けられたことの意義は大きい。これまでも、紛争調整委員会や地方労働委員会など、行政による紛争処理の仕組みは整備されてきたが、司法における裁判外紛争処理機関(ADR)という中立・公正な場が設けられることで、使用者にとっても権利義務を踏まえた適正な紛争解決が期待できる。また、労働審判制度ではまず調停が試みられるが、労働事件は労使の継続的な関係を前提としていることから、調停による解決になじみやすい。さらに、損害賠償や競業避止義務違反による退職金返還請求など、使用者側からの労働審判の申立という可能性も十分にあり得る。

第二に、労働審判員の参画により、多様化する個別労働紛争を、労働慣行や人事・賃金制度の変革などの経営環境を踏まえ、企業実態に即して解決することが可能となる。さらに、労働審判制度を通じて労使の審判員と交流することで、裁判官の知見が広まり、訴訟への波及効果も期待できる。

第三に、個別労働紛争の増加や紛争の長期化は、企業に処理コストを増大させるが、企業は紛争処理に対する意識を変革し、まずは社内の紛争予防機能を高め、もし紛争が外部にかかった場合には、労働審判制度を活用し、いかに迅速に解決していくかを検討すべきであろう。例えば、実体法の整備は必要となろうが、労働審判には、解雇事件における金銭補償といった柔軟な解決の可能性がある。

【労働政策本部労働法制担当】
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