日本経団連タイムス No.2743 (2004年10月21日)

電子化医療情報等の外部保存

−日本経団連、「原則自由」を要請


厚生労働省は2003年6月から、医政局長の私的検討会「医療情報ネットワーク基盤検討会」(座長=大山永昭・東京工業大学教授)において、今後の望ましい医療情報ネットワークの構築に向けて検討を続け、9月30日に最終報告をとりまとめた。

医療のIT化の推進については、医療の質の向上や効率化、医療関連産業の成長につながるものとして、さまざまな分野から大きな期待が寄せられている。こうしたことを踏まえ、今回の最終報告では、情報技術により医療施設間のネットワーク化を促進するメリットとして、(1)医療施設間の患者の紹介が容易 (2)自宅から患者がカルテを閲覧することが可能 (3)投薬や検査の不要な重複を防止 (4)服薬管理の面で情報を共有――など、安全性や患者サービスの質、利便性などの向上を指摘。さらに、医療情報の収集・整備と臨床研究などへの利用が可能となり、医学・医療の向上への寄与が期待できるなど、社会全体にメリットをもたらすとする一方で、プライバシー保護や情報セキュリティの必要性についても言及している。

同検討会において、大きな焦点となったのは「医療にかかる文書の電子保存」。現在は、厚生労働省の通知により、医療機関、医師会以外の場所で電子カルテなどの電子化した診療情報等を保存すること(外部保存)は認められていない。
これに対して日本経団連は、規制改革要望で、民間にも外部保存が可能となるよう要望し続けており、政府も「e―Japan重点計画2004」や「規制改革・民間推進3カ年計画」で、外部保存容認の方針を打ち出している。
しかし、最終報告案が示された8月26日の同検討会では、ある委員から、「外部保存は認められない。百歩譲っても地方公共団体へ認めることが限界」と、外部保存について否定的な発言があり、座長預かりとなっていた。
最終的には、(1)医療の質の向上や患者の利便性の向上のために医療施設間のネットワーク化を推進する場合 (2)危機管理上、医療情報を安全な場所に保存することが特に要求されている場合――に、国の機関や独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体等において外部保存が認められることとなった。
民間のデータセンターなどについては、今回の最終報告では外部保存の対象とはされなかったものの、これらの公共の機関などが開設したデータセンターなどの業務については、

  1. 法規により、保存業務に従事する個人もしくは従事していた個人に対して、個人情報の内容に係る守秘義務や不当使用等の禁止が規定され、当該規定違反により罰則が適用されること

  2. トラブル発生時のデータ修復作業等緊急時の対応を除き、原則として保存主体の医療機関等のみがデータ内容を閲覧できることを技術的に担保できること

  3. 前項を含め、適切な外部保存に必要な技術および運用管理能力を有することを、公正かつ中立的な仕組みにより認定されていること

以上の 1. 〜 3. の要件を満たす場合に、受託が可能としている。

今後はこの最終報告を踏まえ、年末を目途に、適切な外部保存のための技術や運用管理の基準について、ガイドラインが出されることになっている。
日本経団連は今後、要件を満たす施設においては原則自由に外部保存を行えるようにすべきことを、規制改革要望等で引き続き要請していくこととしている。

【国民生活本部社会保障担当】
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