日本経団連タイムス No.2744 (2004年10月28日)

金融制度委員会が「消費者信用産業に関するシンポジウム」

−当局・事業者から現状・課題を聞く


日本経団連の金融制度委員会(勝俣恒久委員長、西川善文共同委員長)は14日、東京・大手町の経団連会館で、消費者信用産業に関する理解の促進を図ることを目的に、「消費者信用産業に関するシンポジウム」を開催した。
消費者ローンやクレジットカードショッピングをはじめとする販売信用などの消費者信用産業は現在、年間信用与信額が70兆円を超え、日本の個人消費を支える重要な産業であるにもかかわらず、法制度の複雑さや業界再編の急速な進展のために、その動向・課題は十分知られていない。そこで、同委員会は、消費者信用産業に関する理解の促進を図ることを目的に、同シンポジウムを開催した。同シンポジウムには、会員企業・団体から約150名が参加。関係各省庁や消費者信用産業の関係企業から、それぞれの業界・事業の現状と課題・展望についての講演を聴取するとともに、意見交換を行った。

150名が参加、意見交換

まず、金融庁監督局の橋本元秀・金融会社室長は、消費者ローンを提供する業者を規制する貸金業規制法ならびに出資法を説明。悪質な消費者金融や商工ローン問題を背景に、開業規制・業務規制(貸金業規制法)および金利規制(利息制限法・出資法)が導入・強化されてきた経緯を紹介した。ヤミ金融問題については「東京都では、信用を得る目的で貸金業登録をし、違法行為を行う例が増加した」と指摘。「違法行為の多発や消費者の知識の未熟さに鑑みると、貸金業界には、法令順守の徹底、フィナンシャルカウンセリングの推進、個人信用情報保護への一層の取り組みなどが求められる」と述べた。

次に、経済産業省商務情報政策局の佐藤達夫・取引信用課長は、クレジットカードショッピング取り扱いや個品割賦(購入の都度申し込み)などを行う業者を規制する割賦販売法や、個人情報保護にかかわるガイドラインの整備状況を概説した。カードショッピングの現状については、「日本は米国に比べ、消費支出に占めるクレジットカードの利用割合が低く、カードサービスの拡大可能性は高い」とした上で、非接触ICカードによるクレジットカード決済実験を支援するなど、経済産業省もカードの普及・利用促進を支援していることを紹介した。

また、東京三菱銀行の和田哲哉・執行役員リテール企画室長は、MTFG(三菱東京フィナンシャルグループ)の「総合カード戦略」について説明した。そのなかで、銀行本体が発行するクレジットカードの保有拡大をめざし、ICキャッシュカードやクレジットカードに、電子マネー機能を搭載するとともに、手のひら静脈認証により、セキュリティを強化したカードの実用化を開始したことを紹介。また、アコムとの提携については、「銀行の強みである低コストと、消費者金融の高収益性を両立させることが狙い」と述べた。

続いて、オリエント総合研究所の品治正和・常務取締役は、オリエントコーポレーションなどの信販会社が行う販売信用の中では近年、クレジットカードの普及を背景に、カードショッピングの割合が、伝統的な個品割賦を上回るようになったと指摘。しかし、与信枠(利用限度額)が設定されているカードに比べ、個品割賦は自動車等の高額商品の購入が可能である点で利便性が高く、依然としてニーズはあるとの考えを述べ、特定の高額商品に個品割賦の的を絞って、独自の審査・回収ノウハウを活かして信販会社の収益向上をめざすとの意向を示した。

最後に、プロミスの小杉俊二・取締役専務執行役員は、消費者ローン全体に占める消費者金融会社のシェアがここ10年間で2割弱から4割以上に拡大し、民間金融機関や信販会社のシェアを上回るようになったと述べ、国民のほぼ4人に1人が消費者金融会社を利用していることから、消費者金融会社のサービスは国民生活に十分根づいていると語った。

さらに今後は、消費者のための教育・相談体制を一層充実させる努力を続けるとともに、健全な業者に対する過剰な規制については緩和を求めていきたいと述べた。

【経済本部経済政策担当】
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