日本経団連タイムス No.2750 (2005年1月1日)

国の基本問題検討委が第3回会合

−中曽根・元首相が講演「今後の国のかたち」/外交・内政で問題提起


2004年7月の第1回会合以降、外交・安全保障、憲法問題など、国の基本的な重要課題の検討を進めている日本経団連の「国の基本問題検討委員会」(三木繁光委員長)は12月7日、東京・大手町の経団連会館で第3回会合を開催した。会合当日は、中曽根康弘・元内閣総理大臣が「今後の国のかたち」について講演を行ったほか、同委員会がとりまとめを進めている報告書案を審議し了承を得た。

講演した中曽根元首相は、現在の日本は、憲法・教育・外交などの国家の本質的な議論がないまま、各論の検討が先行しているとして、外交・内政の両面から、広範な問題提起を行った。

まず、外交に関しては、2005年が日本にとっても世界にとっても重要な転換期であるとし、第一にイラク問題を挙げ、国民議会選挙や憲法制定など新しいイラクの国づくりに向けて世界が一致協力して取り組みを進めるよう体系づくりを行うべきであると指摘。その上で日本は、イラク問題をはじめとする世界的課題について、G8を中心に、米欧の協調や協力体制の構築のために力を発揮すべきだと語った。
第二に、米軍の世界的な再編、日本周辺の安全保障環境の変化に対応して、日本も防衛力の戦略体系や配備、装備の転換を図るべきであると述べ、世界の平和や人道、人権問題解決のために、自衛隊が国連や多国籍軍と共同して貢献活動ができるよう、集団的自衛権の行使を認めることが重要との見解を示した。
また、今後の日本の外交は、日米同盟や国連外交とあわせて、これまで不得手としてきた多国間外交、特にアジア地域における外交を強化すべきであり、中でも日中韓の協調体制を早急に構築すべきであることを強調した。

次に、内政問題については、内外の大きな環境変化の下で日本も大きな転換期を迎えていることから、各政党や国会などにおいて憲法改正に関する検討が進む中、今後、2〜3年内に政治日程にのぼってくるであろうとの見通しを語った。
憲法改正の内容については、前文、天皇、9条、内閣制度など、多くの改正すべき点を指摘、特に9条問題に関しては、憲法上で自衛隊の存在を認めるとともに、当然の権利として、個別的自衛権と集団的自衛権を認めるべきとの考えを示した。
また、現行憲法の厳格な改正要件の下で憲法改正を実現させるためには、各党が一致協力を図ることができるような、弾力的な改正内容にするとともに、各党において政治的決断がなされるべきであると語った。

情報戦略体系整備で質疑

講演後の意見交換では、日本経団連側から、日本の情報戦略体系の整備状況に関する質問が出され、それに対して中曽根元首相は、「国全体として、関係省庁で収集した情報を統合し、戦略的に活用するための中央組織が必要」と応じた。

また、当日の会合では、同委員会がとりまとめを進めている報告書案について審議を行い、了承を得た。報告書案は今後、会長・副会長会議でさらに議論を深め、今月の理事会で承認後、公表する予定となっている。

【環境・技術本部技術・エネルギー担当】
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