日本経団連タイムス No.2750 (2005年1月1日)

財政制度委員会を開催

−「構造改革と日本経済」/東京大学・吉川教授の説明を聴取


日本経団連の財政制度委員会(櫻井孝頴委員長)は12月8日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京大学の吉川洋・大学院経済学研究科教授から「構造改革と日本経済」をテーマに説明を聴取した後、意見交換を行った。

説明の中で吉川教授はまず、日本の財政の状況について、「2013年度までに、国・地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化するためには、年間約3兆円ずつ収支を改善しなくてはならない」と指摘した上で、「日本の場合、デフレの影響を最も受けるのは多額の債務を抱える政府であり、デフレが続く限り財政再建は実現できない」との考えを示した。

また、少子・高齢化による労働力人口の減少が日本経済に与える影響については、「労働力人口が減少しても、日本の潜在成長力は2%程度というのが経済学者のコンセンサス」とした上で、「高度成長期の労働生産性の上昇は、資本装備率の高い産業へのシフトと技術進歩によるものが大きかった」と述べた。
さらに、今後、日本経済が成長を遂げるためには、「規制改革などにより、新しい財・サービスを生み出すイノベーションが重要」と結んだ。

■意見交換

説明後の意見交換では、高原慶一朗評議員会副議長が、「構造改革を進めるには、正しい政策・改革を遂行するための組織・世論が必要であるが、アクションプランを実行するための組織運営のあり方についてどう考えるか」と質問。それに対して吉川教授は、「個別かつ重要な課題ごとに一つずつ成果を出していくことが重要。国民や経済界、マスコミ等の世論の支持が不可欠」と答えた。

また、大内俊昭財政制度委員会企画部会長の「技術進歩を促進するためにどのようなことが考えられるか」との質問に対しては、「(技術進歩の促進には)大学と社会、産業界の連携が今後大きな役割を果たす」との考えを示した。

このほか、会合当日は、財政の持続可能性確保に関する提言案を審議し了承が得られたため、12月14日開催の理事会で審議されることとなった(提言については別ページ参照)。

【経済本部経済政策担当】
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