日本経団連タイムス No.2753 (2005年1月27日)

日本経団連労使フォーラム(2日目の概要)

−労使が春季労使交渉への対応策など示す


日本経団連は13、14の両日、都内のホテルで「第106回日本経団連労使フォーラム」を開催、今次春季労使交渉における課題や対応策などを探った(フォーラム全体1日目の概要については1月20日号既報)。

フォーラム2日目はまず、電機連合の古賀伸明中央執行委員長、JAMの小出幸男会長、UIゼンセン同盟の木剛会長ら労組リーダーが「今次交渉に臨む産別方針と制度・政策要求」について、それぞれ説明した。

この中で電機連合の古賀委員長は「賃金については統一的なベースアップをする環境にないと判断している」と述べた上で、交渉方針として、(1)確実に個別賃金水準を維持・確保するための賃金体系の維持 (2)産業・企業業績の回復を反映した一時金の改善 (3)産業内賃金格差改善の取り組み――の3点を挙げた。また、JAMの小出会長は、「大手労組が賃金水準を引き上げる時代は終焉した。中小の労組が自ら交渉しなければ賃金は上がらない」として、産別共闘と地方共闘を両輪とする交渉の構築をめざすとの考えを示した。

UIゼンセン同盟の木会長は、他産業との賃金格差是正やパートタイム労働者の労働条件改善、労働時間の短縮、65歳定年制への取り組みなどが、今年の労使交渉の基本姿勢であると説明した。

続いて、労働評論家の久谷與四郎氏をコーディネーターに、トヨタ自動車の松原彰雄専務取締役、日本電気の鹿島浩之助取締役常務、三菱マテリアルの清川浩男常務取締役が「今次交渉の具体的対応と雇用と処遇のあり方を考える」をテーマに、パネル討議を行った。

その中でトヨタ自動車の松原専務は、同社の労使が数年前から労使交渉を、賃金・賞与の問題だけでなく、労働時間や職場環境、メンタルへルス、退職金、60歳以降の働き方・生活のあり方などの幅広いテーマを議論するための場としてきたことを紹介。その上で、今次交渉においては、企業競争力の源泉である従業員の意欲と活力をどのように向上させていくかについて、労使で話し合っていきたいと語った。また、直近の人事・労務の重点課題としては、(1)多様な人材が活躍できる環境の整備 (2)60歳以降の働き方・生活のあり方に関する取り組み――の2つを挙げ、女性の活躍推進や期間従業員の制度改革、福利厚生制度の充実などを検討していると述べた。

日本電気の鹿島常務は、国際競争力強化の視点から、賃金水準や労働時間管理の問題について労使で話し合いを進めていくとの考えを示すとともに、今後の雇用・処遇の課題を提起。「環境変化への対応と競争力強化に向け、たゆまぬ改善が必要」との基本認識の下、(1)賃金・賞与については、成果主義の一層の運用適正化と深化を図る (2)労働時間管理については現在、ホワイトカラーの働き方にふさわしいあり方を追求しているが、今後のITによる新しいワークスタイルに耐え得るものとする (3)個人の自立促進を図っている雇用問題については、人材流動化への対応と雇用ポートフォリオを進める――と語った。

三菱マテリアルの清川常務は、産業構造や就業構造といった外的環境の変化、また、グループ経営の推進や経営環境の変化に対する迅速な対応、処遇の見直しの必要性といった内的課題を前にして、「春季労使交渉を、企業経営について労使で議論する場としていきたい」とした上で、今次交渉のポイントは、多種多様な事業を展開する同社において、画一的な制度・処遇を行うことで発生する問題点や課題を洗い出し、個別の事業を強化するための制度・処遇のあり方を議論することにあるとした。また、今後の人事戦略については、グループの求心力醸成など「グループ経営強化への対応」や、「グローバル化に対応した社員のプロフェッショナル化と経営幹部要員育成」を重要事項として挙げた。

このほか、パネル討議では、「雇用形態や個人の価値観、国籍の違いなど労働力の多様化が進む中、さまざまな職務における“人材力”や“現場力”をいかに強化するか」について、各社に共通する今後の人事・労務管理上の重要課題として取り上げて論議した。

最後の特別セッションでは、柔道家で五輪金メダリストの谷亮子氏とスポーツジャーナリストの栗山英樹氏が、「頂点を維持し続ける」と題して対談した。
その中で谷氏は、昨年のアテネオリンピック当時の心境について、「自分を応援し、期待してくれる人たちに応えるためにも、けがを理由に金メダルをあきらめてはいけない。これまで練習してきたことをすべて発揮しようと思った」と胸中を語った。また、普段の練習方法については、「自信を持って試合に臨むために、常に本番と同じ緊迫感を持って練習に取り組んでいる」とした上で、「心・技・体に加え、極限状態でも冷静な判断を下せるよう、脳を鍛えることも心がけている」と強さの秘訣を披露した。
さらに、そんな緊迫感の中でのリラックス法を栗山氏から尋ねられた谷氏は、「旅先や、友人と会っている時も練習のことを考えている。私にとっては、試合に勝って達成感を味わうことがリラックスである」と答えた。

【出版・教育研修本部研修担当】
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