日本経団連タイムス No.2754 (2005年2月3日)

新産業・新事業委企画部会開く

−販売伴わぬ事業も大切/ファンケル・池森会長が講演


日本経団連の新産業・新事業委員会企画部会(鳴戸道郎部会長)は、1月19日に東京・大手町の経団連会館で会合を開き、池森賢二・ファンケル会長から自身の起業体験を聴取するとともに、起業に必要な要素などについて意見交換を行った。

池森会長は自らを「サービス精神の旺盛さにかけては、私の右に出るものはいない」と評した上で、人を喜ばせるために、世の中に存在する「不」を解消することをめざし、不安を安心に、不満を満足に、不快を快適にしようとしていると説明。池森会長が無添加化粧品に取り組んだのは、夫人が化粧品の防腐剤によって化粧品を使えなくなったことがきっかけであったことや、サプリメント、発芽米、青汁に取り組んだのは自身が口内炎に悩まされた経験に基づくものであったことを挙げ、「防腐剤を必要悪と捉えていた当時の業界の常識にとらわれず、自分の感覚を大切にしたことが良かった」と事業における発想の転換の重要性を強調した。
さらに、「成功の倍以上の失敗をしているが、失敗の時の逃げ足が速い。売り上げの一定割合の経常利益がなければ利益があっても撤退する」と、現在の事業成功に至る秘訣を語った。

また、ファンケルの事業の柱として、物品を販売して利益を上げる事業だけでなく、販売を伴わない事業も挙げ、「無償の社会貢献も、自社のブランドイメージの向上などに着実につながっており、結果的に広告費となっている」との認識を明らかにした。
「販売を伴わない事業」を始めたきっかけについては、池森会長が重度の障害者施設を見学に行った時に衝撃を受けたことや、そこで自らの特技を活かしてパン焼き指導を行うなどしているうちに、社員もボランティアに積極的に取り組むようになったことなどを挙げた。また、1999年には特例子会社「ファンケルスマイル」を設立、障害者である従業員がすばらしいあいさつをすることや、うち3名がフォークリフトの免許を取得したことなどを述べ、これらのことが会社全体に大変よい影響を与えていると述べた。
最後に池森会長は「ビジネスチャンスはどこにでもある。不満を満足に変えてしまう仕組みづくりや商品を見出せば、必ずビジネスチャンスになりうる」と締めくくった。

意見交換では、委員からの「失敗した事業からはどのように撤退したのか」との質問に対し、池森会長は、撤退する時は事業を売却するケースもあるが多くは完全撤退であると述べた上で、「担当者が事業をもう少し続けたいという情熱を持っているにもかかわらず撤退する場合には、担当者への配慮が難しい」と語った。また、「池森会長の感性によってビジネスを生み出してきただけに、後継者を見つけるのは難しいのではないか」との問いに対しては、「他社から迎えた現社長が、指示待ち社員になりがちな現社員を提案型プレーヤーに変えるように取り組んでいる」と述べた。

【産業本部産業基盤担当】
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