日本経団連タイムス No.2756 (2005年2月17日)

法制審が会社法制現代化の要綱決定

−組織再編簡素化など、日本経団連の要望盛り込む


法務大臣の諮問機関である法制審議会(会長=鳥居淳子・成城大学教授)は9日に総会を開き、会社法制の現代化に関する要綱を決定した。
会社法制の現代化は、商法や有限会社法など、会社にかかわる基本法制について、現行のカタカナ文語体をひらがな口語体とするのはもちろんのこと、株式会社と有限会社、委員会等設置会社と監査役設置会社など、諸制度間の規律の不均衡を是正するとともに、最近の社会情勢の変化に対応した各種制度の見直しなど、実質的な改正を行うもの。
法制審議会は2002年9月に、会社法(現代化関係)部会を設置し、会社法制の現代化の作業に着手し、03年10月末の要綱試案の公表を経て、04年12月8日に、会社法制の現代化に関する要綱案をとりまとめた。

これに対して日本経団連は、今回の会社法制の現代化が企業の事業活動に与える影響が大きいことから、作業の開始当初より経済界の意見を反映させるべく、政府など関係方面に対して働きかけを行ってきた。具体的には、要綱試案に向け、「会社法改正への提言―企業の国際競争力の確保、企業・株主等の選択の尊重」を03年10月にとりまとめたほか、法務省が要綱試案を公表し、パブリックコメントを求めたのを機に、経済法規委員会(御手洗冨士夫委員長)が03年12月に、「『会社法制の現代化に関する要綱試案』に対する意見」を提出した。

こうした中で、日本経団連が強調した点は、「経済の活性化と国際競争力の維持・強化に資する会社法の確立」である。経済成長のための原動力として会社という仕組みが近年、世界的に注目されており、各国とも、経済活力と国際競争力をテーマに、会社法改正に取り組んでいる。そこで、日本の会社法改正においても、経済の活性化と国際競争力の維持・強化という視点が不可欠であることを一貫して主張してきた。

特に日本経団連が働きかけてきたことは、(1)会社内部のガバナンスにおける過度な規制の見直し (2)組織再編手続きの簡素化・柔軟化 (3)新規事業への進出促進――の3点。

会社内部のガバナンスにおける過度な規制の見直しについては、(1)株主代表訴訟制度の改善 (2)取締役の責任の過失責任化 (3)取締役の責任軽減の範囲拡大(一律報酬の2年分とする) (4)定款規定に基づく利益処分権限の取締役会への移譲 (5)定款規定に基づく取締役会の書面決議の容認――などを求めた。

組織再編の簡素化・柔軟化に関しては、(1)株主総会の特別決議を要しない簡易組織再編の範囲の拡大 (2)議決権の大半を保有している会社を吸収合併する場合における被吸収会社での株主総会決議を不要とする略式組織再編制度の導入 (3)検査役調査を要しない会社設立の範囲の拡大――などを訴えた。

新規事業への進出促進の視点からは、(1)設立時に株式会社1000万円、有限会社300万円である最低資本金制度の撤廃(剰余金分配は純資産300万円以上の企業に限定) (2)出資者全員が有限責任であり組合的な柔軟な内部規律が適用される合同会社(日本型LLC=有限責任会社)の創設 (3)取締役・監査役等の会社機関の設計の柔軟化 (4)既存の有限会社への現行制度の適用――などを要望した。

こうした日本経団連の要望は、今回決定された要綱に大筋盛り込まれ、企業の選択肢が大幅に拡大していることから、全体としては評価できる内容となっている。
法務省は、同要綱に基づいて法案を作成し、3月に閣議決定した上で今通常国会に提出する予定としている。

【経済本部経済法制担当】
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