日本経団連タイムス No.2760 (2005年3月24日)

第57回九州・山口経済懇談会を開催

−九州・山口の自律的発展策探る/観光振興など意見交換


日本経団連(奥田碩会長)と九州・山口経済連合会(鎌田迪貞会長)は10日、鹿児島市内のホテルで「第57回九州・山口経済懇談会」を開催、奥田会長はじめ日本経団連の首脳役員、九経連の会員企業代表者など約170名が参加した。今回は、「企業のダイナミズムの発揮と九州・山口の自律的発展に向けて」を基本テーマに、九州地域における観光の振興・戦略、交通インフラの整備、九州・中国・韓国の3カ国・地域を含む環黄海地域の経済圏形成に向けた活動の推進などについて、意見を交換した。

懇談会の冒頭、九経連の鎌田会長はまず、九州経済について、テンポを緩めながらも製造業を中心に回復を続けていると指摘した上で、九経連が九州地域の発展のために行ってきた取り組みとして、(1)九州地域戦略会議による九州観光戦略の策定 (2)九州新幹線の南半分(新八代―鹿児島中央間)の開業 (3)環黄海経済圏形成に向けての活動――などを報告。今後も九経連が、九州・山口地域の自律的発展のために取り組んでいくとあいさつした。

■活動報告

第1部では、日本経団連側から、西室泰三副会長が「平成18年度税制改正」、柴田昌治副会長が「観光振興への取り組み」、西岡喬副会長が「今後の宇宙開発利用の推進」、勝俣恒久副会長が「地球温暖化問題への対応」について、活動を報告した。

続いて、九経連側からはまず、明石博義副会長が「九州観光推進機構と九州観光戦略」について説明を行い、観光産業は裾野の広い産業であることから、九州の戦略産業の1つと位置付け、住民や企業、大学など多様な力を結集して戦略的に取り組むことの必要性を強調した。
さらに、九州の観光戦略の柱として、(1)旅行先としての九州を磨く (2)国内大都市圏から九州に人を呼び込む (3)東アジアから九州に人を呼び込む (4)九州観光戦略を進める体制をつくる――ことを挙げ、4月に設立する「九州観光推進機構」(会長=田中浩二・九州旅客鉄道会長)を核に、官民一体となって広域観光振興に取り組んでいくとの意向を示した。

次に、大野芳雄副会長が、九州新幹線や高速道路など、九州地域の高速交通体系の現状と整備促進に向けた取り組みを報告した。まず、九州新幹線については、昨年3月の鹿児島ルート(新八代―鹿児島中央間)の開業によって、経済や観光、文化などさまざまな方面で顕著な効果が上がっていると説明、さらなる整備の着実な推進が不可欠であると語った。
また、高速道路については、自動車保有率が高く、自然災害の多い九州地域にとって、最優先で整備されるべき交通基盤であるにもかかわらず、九州域内の整備状況が計画の6割程度にとどまっていることに強い危機感を示すとともに、東九州自動車道などの整備に対する支援・協力を呼びかけた。

奥田会長、今後の発展へ期待感を表明

■自由討議

第2部の自由討議では、九経連側からまず、南九州経済の課題として、生産拠点としての大型工場の南九州への進出を進めるとともに、観光産業に注力すべきであるとの意見が出された。また、「芋焼酎」を中心とした焼酎ブームが起こっているといわれる中、焼酎産業は酒造メーカーとしてだけではなく、地元の農業や食品産業、観光産業と連携しながら多様な取り組みを進めていることを紹介する発言もあった。
さらに、九州・山口地域が1990年代から取り組んでいる「環黄海経済圏の形成」に関しては、九経連が昨年10月に、日中韓3カ国の企業が交流する場として「環黄海ビジネスダイアログ」を新設したことを紹介するとともに、現在交渉が進められている、東アジア諸国とのFTA(自由貿易協定)などを巡る動きの中に、九州経済界の意見も吸い上げてほしいとの意見もあった。

これらに対して日本経団連側は、「テレワークといった情報通信技術を利用した産業振興が考えられる。また、観光振興にあたっては、観光資源をゾーンで捉えて商品化する必要があるだろう」(和田紀夫副会長)、「大学と農業、観光業などが有機的に連携した“産業クラスター”は、地場産業を発展させる有力な戦略であり、ご報告のあった焼酎メーカーの取り組みはそれに適ったものだと思う」(高原慶一朗評議員会副議長)、「日中韓3カ国の経済連携は極めて大事。経済界の考え方を引き続き政府・与党に働きかけていく」(宮原賢次副会長)――などとコメントした。

最後に総括を行った奥田会長は、地方自立に向けた九州地域の取り組みが印象に残ったとの所感を披露するとともに、「自動車産業の集積地ともなりつつある九州は、観光も含めて、環黄海経済圏の中で大きな地位を占めていけるのではないか」と述べ、九州地域の今後の発展に期待感を示した。

【総務本部総務担当】
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