日本経団連タイムス No.2761 (2005年3月31日)

「知的財産推進計画2005」策定へ提言

−保護と利用の均衡確保など具体的な重点政策課題提示


日本経団連(奥田碩会長)は15日、「『知的財産推進計画2005』の策定に向けて」と題する提言を発表した。同提言は、政府の知的財産戦略本部(本部長=小泉純一郎総理大臣)が5月末にもとりまとめる予定の「知的財産推進計画2005」に対し、政府がこれまで行ってきた同計画に基づく改革を高く評価するとともに、03年、04年に引き続き、経済界の意見を反映させることを目的としたもの。同提言のとりまとめにあたっては、産業技術委員会知的財産部会(石田正泰部会長)と産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)が協力し、知的財産政策の強化に向けた具体的な課題を提示した。

同提言では、日本の産業国際競争力の強化に役立つ知的財産政策が重要との考えを基本に据え、今後の政策には、(1)「保護中心」から、活用の促進に向けた法的環境の整備や活用と権利保護の調整といった「保護と利用とのバランスの確保や活用」へ (2)「市場内での分配」から、流通の効率化や人材の育成を通じた「市場の拡大」へ (3)「国内問題」から、特許権の調査結果・審査結果の相互利用や、海外の知的財産権侵害に対する対策強化といった「国際問題」へ――と重点を移していくべきとしているほか、これまでの成果を国際競争力の強化に着実につなげていく形への転換が必要であると訴えている。取り上げた主な課題は次のとおり。

■知的財産の活用

活用に向け、コンテンツ情報提供のための基盤整備やブロードバンドを利用したコンテンツ配信事業の促進、新しいビジネスモデルやセキュリティ確保、課金方法などの調査支援を行う。さらには、ライセンス契約の保護、著作権の利用に関する権利の法律上の位置づけの検討、コンテンツの利用に関するあっせん・裁定制度の改善など法的環境を整備する。加えてオープンスタンダードの構築・普及と知的財産権の権利行使の調整、デジタル化時代に対応した「私的使用」の範囲の明確化など、活用と権利保護との調整に向けた取り組みを行う。また、制作支援・作品流通・文化保全のためのアーカイブの整備を進める。日本映画への日本語字幕付与などユニバーサルデザイン化への対応等を行う。

■知的財産分野における国際的問題への積極的な取り組み

世界特許の実現や模倣品・海賊版対策の推進、海外における市場環境整備の一層の促進、海外における知的財産権侵害に対する新たな対抗策の検討を行う。

■知的財産の創造

産学連携における実態を踏まえた柔軟な契約を実現するほか、職務発明に関する継続的な検討を行う。また、技術力をもった中小・ベンチャー企業の育成を行う。

■知的財産権の保護

医療関連行為の特許保護強化や中古ゲームソフト流通をめぐる課題の検討、技術的保護手段等の回避行為に関する検討を行う。

■コンテンツ人材の育成

不足しているビジネスプロデューサーの育成プログラム、社会人再教育プログラム、長期間のインターンシップ・プログラムなどを支援するとともに、海外映像教育機関との交流や留学支援を行う。また、海外映像教育用図書の翻訳や映像専門職大学院認証評価機関の設置など、教育基盤の整備を図る。

■コンテンツ制作環境の整備

公共スペースへの電源ボックス設置など、ロケーション撮影の円滑化を進めるとともに、映像の企画等を提案し、国際共同制作を呼びかける市場の創設などを行う。

■コンテンツ産業の近代化支援

業界調査の推進や消費者ニーズの把握を進め、エンターテインメント・コンテンツ年鑑の整備を行う。さらにはアニメ業界における委託取引に関するモデル契約書について、実態を踏まえて検証する。

■ライブ・エンターテインメントの振興

ライブ・エンターテインメント集積特区の設定、カジノに関する法整備が進んだ際の特区との組み合わせの検討、シアターカレンダーの配布など、ビジターやツーリストを市場に呼び込む仕組みづくりを行う。

■政策の効果に関する評価の仕組みの整備

知的財産政策によって国際競争力がどの程度向上したかについての評価を行うことが必要であり、そのための指標などを作るべきである。

【産業本部産業基盤担当】
Copyright © Nippon Keidanren