日本経団連タイムス No.2762 (2005年4月7日)

ISO/SRに関するワーキンググループ総会、第1回会合を開催

−SRの規格化作業開始/企業行動・社会貢献推進合同委員会で報告


企業の社会的責任(CSR)が最近、注目されている。その関連で、国際標準化機構(ISO)は、2008年前半の完成をめざして「あらゆる組織に適用できる社会的責任に関するガイダンス文書」という規格の策定を開始した。具体的には、3月7〜11日、ブラジルのサルバドールで「社会的責任(SR)に関するワーキンググループ総会」第1回会合が開催されている。今回の会合では、日本の経済界関係者の発言が会議の流れを変える契機となるなど、日本は重要な役割を果たした。その模様については、3月17日開催の日本経団連の企業行動委員会(武田國男委員長、大歳卓麻共同委員長)と社会貢献推進委員会(池田守男委員長)の合同委員会において、第1回会合出席者が報告を行った。概要は次のとおり(月刊Trend5月号に関連記事掲載予定)。

■多様な参加者

第1回会合には、日本はじめ43の国と24の国際機関から225名のエキスパート(オブザーバーも含めると全体で300名)が参加した。日本からは、日本経団連が推薦した3名の経済界関係者や、労働組合、消費者団体、政府、その他で構成する合計7名のエキスパートとオブザーバー7名が出席し、(1)規格開発の手続き (2)規格の構造や定義 (3)実際の作業をするタスクグループでの作業分担――などについて議論した。
一連の作業は、ブラジルを議長、スウェーデンを副議長として進められる。参加するエキスパートの内訳は、先進国関係者150名、途上国75名で、ステークホルダー別では産業界52名、NGO31名、政府28名、消費者団体21名、労働団体14名、国際機関34名、その他45名となっている。

■紛糾した議論

議長国は、プロセスを重視する従来型のマネジメントシステムに傾斜した規格案を提示。これに対し各国から「議長国原案は、第三者認証につながる危険性があり、問題である」と、会議冒頭から異論が多数提出された。また、参加者が多様なこともあり、それぞれの参加資格の妥当性やステークホルダーのバランス、議事手順などをめぐり疑問が提示されるなど、議事は紛糾した。
議長国は原案に沿って強引に議事を進めたが、議論の流れに大きな影響を与えたのは、日本代表団による2回に及ぶ日本提案についてのプレゼンテーションだった。日本が具体的な案を示したことで、他国の関心をひき、多くの代替案を誘引することとなった。
今回提示した日本提案は、日本経団連の社会的責任経営部会が原案を作成し、SRに関する日本のISO対応機関である「ISO/SR国内対応委員会」に提案して決定したものである。議長国原案との大きな違いは、(1)SRの対象や定義、原則などを明記していること (2)各組織が取り組むべきSRの要素(例えば、法令順守や人権、雇用、環境など)を具体的に指摘していること (3)ステークホルダーとのコミュニケーションを重視していること――である。

■会議の結論

会議は5日目の最終日まで紛糾したが、一部を次回総会までの暫定的なものとする妥協が成立し、最終的に8つのグループを設けて具体的検討を開始することになった。
設置されたグループは、(1)途上国のための資金調達 (2)広報 (3)運用規定 (4)ステークホルダー・エンゲージメント/コミュニケーション(暫定) (5)SRの定義、範囲、原則、対象(暫定) (6)組織への適用(暫定) (7)編集 (8)翻訳。特に、(2)の広報タスクグループについては、日本の経済界エキスパートが座長に就任し、今後の規格策定作業に積極的にかかわることとなった。
第2回会合は今年秋に計画されており、今回暫定となった部分について、タスクグループの恒久的な設置、座長や幹事などの最終的な選任を行うこととなった。

■今後の課題

今回の会合では規格策定のための暫定的な検討体制ができたにすぎず、実質的な内容の検討にはまだ入っていない。どのような規格案がまとまっていくのか、予断を許さないが、多種多様な立場の参加者と複雑に絡む利害関係の中で、日本の経済界の主張をねばり強く展開していくことが大きな課題である。日本経団連としては、今後とも企業の経験に基づく実践的、具体的な提案をしていく方針である。

【社会本部】
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