日本経団連タイムス No.2762 (2005年4月7日)

第292回ILO理事会開く

−06〜07年度事業計画や予算案を中心に議論


国際労働機関(ILO)の第292回理事会が3月3〜24日、ジュネーブで開催され、2006〜07年度の事業計画や予算案を中心に議論を行った。

ILO事務局が提出した事業計画原案は、従来の技術協力中心の活動から脱皮して、グローバル・ガバナンス向上のための国際機関間の政策協調への取り組みに重点を置いたもの。これに対して使用者側は、ILOが優先的に実施すべき事業は、本来の得意分野を活かした雇用創出に向けた技術協力や、国際労働基準の現代化などの実践的事業であることを、昨年11月の理事会に引き続き強調した。
また、事務局の予算原案は04〜05年度に比べて4.3%増となっていたが、激しい議論の末に、1.1%増に修正、今年6月の総会に提出されることが決まった。これに対し、多額の分担金を拠出している米国や英国、日本などの各国政府は、一層の予算削減を主張している。

理事会では、ILO総会や理事会のあり方についての検討も行った。ILOの構成員(政・労・使)は、政策決定機関である総会と理事会が、より政策的な議論に注力できるよう運営を改善することを、共通課題として認識している。
これに関連して使用者側は、総会については、総会で採択する労働基準や決議などのフォローアップにもっと力点を置くべきであることを主張。理事会については、提出される資料の内容精査に時間をかけるのではなく、実質的な政策検討に時間を割いて、事務局を監督する機能を高めるべきであることなどを強調した。

多国籍企業に関する小委員会では、国際標準化機構(ISO)が進めている社会的責任(SR)規格策定に関連した議論を行った。ISOのSR規格策定では、労働分野におけるILOの役割を尊重することが前提条件として合意されていたにもかかわらず、ISOが両機関間の覚書締結を待たずに作業を進めたことに対して、昨年11月の理事会で懸念が表明されていた。この3月に開催されたISOのSRに関するワーキンググループ第1回総会直前に、このような前提条件を改めて確認するとともに、規格策定作業におけるILOの積極的な参加を認める内容の覚書が両機関間で締結されたことに対して、各理事が高い評価を示した。

強制労働が長年にわたり問題となっているミャンマーに関しては、今回の理事会でも議論を行った。強制労働解決に向け、同国当局の姿勢を確認する目的で、ハイレベル・ミッションを2月に同国に派遣したが、当局最高幹部との協議が実現しなかった。ILOではこれを踏まえ、同国の対応を見守るという従来の姿勢を改めることとし、各国政労使や関係機関に対して同国との関係見直しを呼びかけることも視野に入れ、6月の総会でこの問題への対応について改めて審議することを決めた。

【労働法制本部国際関係担当】
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