日本経団連タイムス No.2774 (2005年7月7日)

カンポス・SEC委員の講演会開催

−サーベインズ・オクスリー法成立の背景や目的などを説明


日本経団連は6月21日、東京・大手町の経団連会館で、米国証券取引委員会(SEC)のロエル・カンポス委員による講演会を開催、サーベインズ・オクスリー法の目的や、国際会計基準への米国の姿勢などについて、同委員の見解を聴取した。

日本経団連の萩原敏孝経済法規委員会共同委員長の開会あいさつに続いて登壇したカンポス委員は、サーベインズ・オクスリー法の成立の背景について説明。米企業の会計不祥事やコーポレート・ガバナンス破綻が発端ではあるが、課題は普遍的なものであり、その主旨は企業経営者の責任の強化にあると述べた。また、経営者の財務報告義務を厳しくすることで、米国マーケットを「誠実」な状態にすることによって、投資家の信頼を回復し、その利益を保護することがねらいであると語った。

サーベインズ・オクスリー法施行によって、米国で株式を公開している外国企業の経営に問題が生じるという課題については、規則の立案に当たり、外国の制度との間に整合性がもてるように、米国と相手国の2国間で協議を行ったことを説明。外国企業が特に懸念していたのは監査委員会についてであったが、日本の場合は、監査役制度が執行部に対して独立性を発揮できるものとみなされ、法の規定を満たしているとされたと語った。

サーベインズ・オクスリー法によって、独立した監査法人が内部統制について監査を行うことになったことについてカンポス委員は、これに伴いコストが増加することは理解しているが、結果的に「利益がコストを上回る。内部統制を強化することにより、資本調達コストが下がる」と述べ、例えば、投資家が株式を買うときに財務報告に信頼性がないと、投資家はプレミアムを要求することになり、結果として企業にとって調達できる資本が目減りすることになると解説、企業にとっても、マーケットが「誠実」な状態であることがいかに重要かを改めて強調した。

続いてカンポス委員は、国際会計基準(IFRS)の問題に言及。各国の機関が自国の会計基準とIFRSのコンバージェンス(統一)に努めていることについて、SECとして支持することを表明した。

また、米国の「一般に認められた会計原則」(GAAP)とIFRSとのコンバージェンスを進めなければならないことや、各国が協力して証券監督者国際機構(IOSCO)において一貫性のある解釈がなされることが大事であることを指摘した。

格付機関の基本行動規範については、IOSCOが「信用格付機関の基本行動規範」を公表したことに触れるとともに、国際間でルールが適用されるためには、規制のグローバル化や、透明性・一貫性の確保が必要であり、執行のための堅牢なメカニズム確立が重要であると述べた。

講演の後、参加者との間で質疑応答が行われた。

【経済本部税制・会計担当】
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