日本経団連タイムス No.2775 (2005年7月14日)

日本メキシコ経済委が総会開催

−ルイス−カバーニャス駐日大使が講演/今後の日墨関係で見解


日本経団連の日本メキシコ経済委員会(小枝至委員長)は8日、東京・大手町の経団連会館で2005年度総会を開催した。
同総会では、小枝委員長の開会あいさつに続き、駐日メキシコ大使のミゲル・ルイス−カバーニャス・イスキエルド氏が「最近のメキシコ情勢と日墨関係について」と題し、講演を行った。大使は講演の中で、(1)メキシコ経済の現状 (2)日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)発効がもたらすチャンス (3)今後の日墨関係――について、認識・見解を示した。

メキシコ経済の現状を説明

まずメキシコ経済の現状について大使は、「安定」「成長」「競争力」という3つの特徴を指摘。このうち「安定」については、メキシコ経済の安定の度合を示すものとして、インフレ率や為替レート、外貨準備高、証券取引所指数、国債の格付け評価などの各指標を挙げた。また、連邦政府における現政権の任期終了を約1年半後に控え、2008年までに満期を迎える公的債務の償還を前倒しで行うなど、政権引継ぎを確保する政治や経済の環境整備が整ってきており、2006年の選挙では、政権交代があっても、現在の政治的、経済的路線の継承が保証されていることを指摘した。
「成長」については、GDPが安定的成長を続けて世界9位となっていることを示すとともに、人口構成にも言及。平均年齢は22歳と若年層が多く、学校教育関連に多くの支出を行っており、今後の人的資源にも期待ができるとした。
「競争力」に関しては、外国直接投資(FDI)受け入れ額が発展途上国の中では第3位であることや、輸出総額と輸入総額がともに世界第7位の水準であり、双方の額がともに右肩上がりであることを挙げた。政策面では政府として規制緩和と経済改革を積極的に推進しており、カナダや米国との結束を図り、北米所在企業の競争力を強化していることなどを指摘した。

大使は次に、今年4月1日に日墨EPAが発効したことによって生まれるチャンスについて説明。日本にとってのチャンスとしては (1)拡大中のメキシコ市場へのアクセス改善(既に44%の関税は撤廃。さらに9%が今後5年間で削減、残りは10年間で撤廃される) (2)投資のチャンス(整備されたFTAネットワークはメキシコ所在企業に有利に働く。北米市場への参入が容易になる) (3)公的入札に参加するチャンスの拡大(メキシコ石油公社や連邦電力委員会の近代化に関わるプロジェクト)――の3点があるとした。一方、メキシコ側のチャンスとしては、(1)日本市場へのアクセス改善 (2)日本からの投資に対するインセンティブ強化 (3)協力のスキーム補強(中小企業支援プログラムなど)を挙げた。その上で大使は日墨EPA発効によって2国間貿易総額や日本からの対メキシコ投資が今後伸びていくとの見通しを示した。

これからの日墨関係を語る中で大使は、観光の問題に言及。2004年に日本を訪れたメキシコ人は1万7128人、前年比46.6%増加した一方、毎年8万人の日本人がメキシコを訪問していることを指摘。観光客の増加傾向とEPA発効は、2国間のフライトの増便を検討する上での重要な要素になると述べた。

大使は最後に、日本とメキシコが戦略的同盟関係を選び取ったこと、日墨には民主主義や人権尊重、貿易・投資に関する国際ルールの順守といった共有する原則が存在すること、両国には国民レベルの親近感が存在することなどから、両国関係は今後ますます深まっていくだろうと結んだ。

総会はこの後、2004年度事業報告・収支計算、2005年度事業計画・収支予算を承認し、閉会した。

【国際協力本部中南米担当】
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