日本経団連タイムス No.2780 (2005年8月25日)

日米中トライラテラル会議で合意

−「日米中関係の安定・協力は3ヵ国と世界にとって利益」


経済広報センターなどが共催

日米中トライラテラル会議が7月21、22日の両日、中国・北京大学で行われ、日本経団連の関連組織である経済広報センター(奥田碩会長)から、渡邊幸治・経済広報センターシニアアドバイザーや岡本行夫・前総理大臣特別補佐官ら5名が出席した。同会議には中国側から、呉建民・中国外交学院院長(元駐フランス大使)、王緝思・北京大学国際関係学院院長や、米国側からジェイムズ・スタインバーグ・ブルッキングス研究所副所長(前米国国家安全保障担当大統領次席補佐官)、ジェフリー・ベイダー同研究所中国研究部長(元国務省東アジア担当次官補代理)ら、日・米・中3カ国の有識者21名が出席。東アジアにおける共通の関心事項と懸案事項について議論し、「日米中の関係の安定と協力は3カ国、そして世界にとっても利益となる」などの認識で合意した。

会議初日には、中国北京の迎賓館釣魚台で李肇星外相と会見。李外相は、「中国は日中関係を重要視しており、この三者会議に大きな期待をかけている。中国経済の発展は、日本にとってチャンスであり、脅威ではない」との見解を示したほか、反日デモ後の鎮静化のために、中国政府が各地に宣伝団を派遣したことや、李外相、呉元大使自らもその宣伝団に参加したことなどを語った。

会議の冒頭、中国側は、「岐路にある日中関係において、この会議を通じ、(関係改善のための)政治的叡智を見つけ出したい。良い考えがあればそれを政治指導者に伝える。また米国側は、日中関係の改善に何ができるか考えてもらいたい。日中関係の悪化は米国の利益を損なうものだ」と述べ、同会議において日中関係改善の糸口を探りたい意向を示した。
また、中国は国際社会で「平和的台頭」をめざしており、日米両国はこのことを理解して欲しいと要望。日中関係については、日中は共通の利益があり、経済の相互補完関係を全体の関係改善に利用すべきとの考えを示したほか、首相の靖国神社参拝などについても意見を述べた。

これに対し日本側からは、中国における対日感情の悪化には、中国政府が行った天安門事件以降の教育のほか、日本が戦後60年にわたり、ODA等の供与や平和・民主主義国家として努力してきたことが中国国民によく知られていないことも影響していると指摘。また、日本も歴史認識をきちんと持ち、それを合理的に説明できる人材の必要性があると述べた。

米国側からは、「日米中は地域の平和と安定のためのリーダーになるべきである」「中国の経済発展・台頭は、米国にとってマイナスと考える傾向が強い」「中国の軍事増強の意図が不透明でありそれが明らかにされなければならない」などの発言があった。また、中国の教育についても、過去のことばかりを国民に考えさせることは日中関係に良い影響はもたらさないと指摘した。

会議終了後、次回の会合を、来年前半に日本で開催することを確認、またその会議で提言をとりまとめることを合意した。

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同会議は、今年に入り中国各地で起こった反日デモの影響で日中間の緊張が高まったことから、これを懸念する米国のブルッキングス研究所と戦略国際問題研究所(CSIS)が、北京大学と経済広報センターに開催を提案し、四者の共催で、北京大学がホスト役を務めて行われたもの。

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