日本経団連タイムス No.2781 (2005年9月1日)

地球温暖化めぐる動向と課題

−環境安全委員会地球環境部会、経産省審議官から聴取


日本経団連の環境安全委員会地球環境部会(服部拓也部会長)は8月25日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、経済産業省の深野弘行大臣官房審議官から、地球温暖化をめぐる最近の動向や今後の課題を聴取し、意見交換を行った。

深野氏はまず、地球温暖化に関する最近の国際動向について、「今年11月にモントリオールで開催予定のCOP/MOP1(第1回京都議定書締約国会議)では、京都議定書に基づき、先進国の第2約束期間の数値目標や、第1約束期間(2008〜12年)の約束未達成の場合の措置などについて国際交渉が開始される。米国や途上国が参加しない中で、日本を含む他の先進国だけが手足を縛られるような事態を避ける必要がある」と指摘した。
また、温暖化問題が主要議題とされた先の英国グレンイーグルスサミットの模様や、主要国での議定書の達成見込みの状況を紹介し、「EUやカナダ、ニュージーランドでも京都議定書の目標達成は必ずしも容易な状況にはない」と述べた。温暖化問題の出発点である科学的知見については、どの程度の濃度の温室効果ガスがどのようなリスクを与えるか、多くの研究者によりさまざまな指摘がなされているものの、慎重な評価が必要であると指摘。日本のスーパーコンピューター「地球シミュレーター」を活用した日本の研究によれば、必ずしもEUで議論されているような危機的な結果にはならないとの報告例も紹介した。

さらに、「わが国政府が4月に閣議決定した京都議定書目標達成計画を実現させるためには、先進国が途上国に温室効果ガスの排出削減に係る技術や資金を投資し、削減分を先進国の削減量として利用できるCDM(クリーン開発メカニズム)などの京都メカニズムを活用することが重要である」と指摘。そのため、06年度から環境省などとも連携し、本格的にクレジット取得を進めるとともに、そのための国内体制を整備していく予定であると説明した。また、「現在、CDMには省エネプロジェクトが認められていないが、世界最高水準にある日本の省エネ技術を、CDMなどを通じて世界に普及して温暖化防止に貢献することができるよう、国際的な取り組みも強化していく」と述べた。
最後に、産業界が強く反対している環境税について、今後の動きは不明であるが、政府の目標達成計画で検討課題として位置づけられ、現在、中央環境審議会において効果などについて真摯な検討が進められているとの説明があった。

9月中旬目途に環境税反対の意見書公表

この日の会合ではその他、今秋以降の来年度税制改正の議論に向けて、地球温暖化防止の基本は自主的な行動の拡大であり、環境税には改めて反対する旨の意見書を取りまとめていくことが承認された。環境安全委員会では、9月中旬を目途に意見書を公表する予定である。

【環境・技術本部環境・エネルギー担当】
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